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上田綺世が日本代表で覚醒か その能力はすべてにおいて「対アジア」に適している (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei

【日本代表デビューから4年、ゴールは遠かった】

 地道なその作業は前半終了間際に報われた。一瞬の隙を突いて相手の背後を取ると、堂安律のパスを受け、角度のない位置から自身2点目を鮮やかに決めて見せた。

 さらに後半の立ち上がりにも、南野のアイデア溢れるパスに反応し、巧みなフィニッシュワークで3点目をマーク。見事にハットトリックを達成し、勝利の立役者となったのだ。

「正直、相手が相手なんで、そこまでの価値はないのかなっていう気もしてしまいますけど」

 ハットトリックの感想を問われた上田は意外にも素っ気なかった。しかし、こうも続けた。

「でも、僕はやっぱり本質的なところは、試合に勝つためにそれぞれの役割があると思っていて。FWに関して言えば、それが点を取ることっていうだけだと。ハットトリックして勝つのもいいと思いますし、それが何点でも、勝つっていうことが大前提だと思っています。そっちのほうが重要かなと」

 ハットトリックよりも、点を取ってチームを勝たせた事実にこそ、上田は価値を感じているようだった。

 それがワールドカップをかけた戦いであることも、より大きな意義を見出せる。

 もちろん、勝って当たり前の相手ではある。しかし、勝負の世界に絶対はあり得ない。日本代表に向けられる要求が高くなるなかで、勝ち続けることは我々が想像する以上に簡単なことではないはずだ。

「僕はイレギュラーがあると思っている。今日の相手もそうですし、仮に前半に点を取れてなかったら、ちょっとややこしい試合になったと思う。

 特にこういう公式戦では、勝つことが最重要だと。難しいゲームもあると思っているし、今日がその試合だったかもしれない。そうならないきっかけを作れたことは、僕のなかでは評価できると思っています」

 振り返れば、上田が代表デビューを果たしたのは、まだ法政大に所属した2019年のコパ・アメリカだった。2022年から日本代表に定着し、カタールワールドカップの舞台も経験したものの、ゴールという結果は遠かった。

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