ジーコが語るカタールW杯。森保一監督に「どうしても伝えたかったこと」とは? (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

決勝トーナメントに進出しても不思議に思わない

 少し前に、彼が鹿島の試合を見に来た時、再会を果たし、言葉をかわした。私がW杯に話を向けると、彼はドイツやスペインを向こうにして戦わなければいけないことを、冗談まじりにこぼしていた。私は彼に言った。『だからといって決して怖気づいてはいけない。誰もがドイツやスペインが強いと知っているからこそ、人々を驚かせることができるのだ』と。

 たとえば2018年のロシアW杯では、韓国がドイツに勝利し、結果的にドイツを敗退させたではないか。サッカーはピッチの外にいる者の予想どおりにはいかないものだ。勝敗はピッチのなかで決まるもの。そしてピッチのなかには11人と11人しかいない。状況は五分と五分。何が起こってもおかしくない。

 日本人の精神力の強さはこんな時に大きな力を発揮する。だから森保監督は何も臆することなく、自分はいいチームを持っていること、ポテンシャルの高い選手がいることに自信を持つべきだ。そして『フィジカルと、何よりも精神面を鍛え、選手たちを信じることが大事だ』と伝えた。

 もちろん私が言わなくても、彼には重々承知のことだろう。彼が戦い抜くだけの賢明さを持ちあわせていることはわかっている。でも、そう言わずにはいられなかったんだ。

 カタールで彼がインパクトのある仕事を成し遂げると信じている。日本が決勝トーナメントにコマを進めても、私は何の不思議にも思わないだろう。選手もコーチもそれだけのスキルを十分に持っているのだから。何より私は日本の一サポーターとして、日本代表の活躍を信じている」

――では、カタールW杯に挑むブラジル代表はどうでしょうか。

「もうひとつの我が代表、ブラジルについても私はかなり期待している。長いこと、中傷と倦怠という病気にかかっていたセレソンだが、東京オリンピックを境に息を吹き返した気がする。若手の選手たちが東京でブレイクする様子は、我々に大きな衝撃を与えてくれた。まるで蝶がさなぎから孵るのを見るかのようだった。そして大会後、A代表に入った彼らは、セレソンを変えていった。

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