森保ジャパンのパスはどれくらいつながっているか。ボール支配率が明らかにする歴代日本代表の姿 (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Sano Miki

 最終予選8試合の平均値は58%。森保ジャパン(54%)、ハリルジャパン(48%)を大きく上回る数字であることは言うまでもない。ひと言でいうならソフト。右肩上がりにあった日本人選手の長所が反映されやすいサッカーだった。本大会(南アフリカW杯)こそベスト16という成績を残したが、ストレスがたまる試合を繰り広げたその前の岡田ジャパンとは一転、目に優しい、日本人の心をくすぐる満足度の高いサッカーを展開した。ブラジルW杯本大会でのグループリーグ敗退という不成績は、チームを早く作り上げてしまったこと。4年間の使い方を誤った結果と言える。

 筆者の好みは、ブラジルW杯後、ザッケローニの後任として代表監督に就任したアギーレのサッカーになる。

 采配を振った試合はわずか10試合なので、提示できるデータは少ないが、4試合戦った2015年アジアカップのデータをあえて持ち出せば、そのボール支配率の平均は61%になる。個人的にとりわけ好きな試合は、グループリーグ第2戦のイラク戦(支配率60%対40%)で、その1-0というスコアは、数ある1-0の中でも最上級に値する内容だった。

2015年アジアカップ4試合のボール支配率(平均61.1)
日本×パレスチナ(4-0)57.6-42.4
日本×イラク(1-0)59.6-40.4
日本×ヨルダン(2-0)61.6-38.4
日本×UAE(1-1)65.4-34.6

 準々決勝でUAEに1-1の末にPK戦で敗れたため、高い評価を得ることはできなかったが、そのUAE戦(支配率65%対35%)にしても、個人的にはPK 負けを許したくなる内容だった。アギーレは、サラゴサ監督時代にかけられた八百長疑惑のために、アジアカップ後に契約解除となったが、まさに惜しまれる退任劇だった。

 ボール支配率を最大の拠りどころにするわけではないが、それが低いより、高いサッカーを見たい。代表監督には、勝利とともにこの理想を、クルマの両輪のように、可能な限り追求してほしいものである。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る