「なぜ前田大然を前線で使わない?」。森保監督は絶好調の飛び道具を日本代表でどう生かすのか

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

カタールW杯アジア最終予選特集

 3日前にタイトル奪還の可能性が絶たれたのだから、気持ちが切れていてもおかしくなかったはずだ。

 それでも「目標がないからできないチームにはしてはいけない。自分たちはもっとできるはずだと全員で話し合った」と小池龍太が言うように、この日の横浜F・マリノスは気持ちが切れるどころか、むしろ士気を高め、強度と切り替えの早さで相手を圧倒し、自らの攻撃スタイルを最高レベルにまで引き出していた。

現在得点ランキング1位の横浜FM前田大然現在得点ランキング1位の横浜FM前田大然この記事に関連する写真を見る 対戦相手のFC東京が早い時間帯に退場者を出したこともあったが、両者の間にはそれを差し引いても、埋めがたい実力差が横たわっていたことは明らかだった。取りも取ったり8得点。敵将・長谷川健太監督を辞任に追い込む圧巻のゴールラッシュだった。

 その口火を切ったのは、前田大然だった。開始10分、中盤でルーズボールを拾うと、そのまま一気に加速してエリア内に侵入。飛び出してきたGKに触れられてチャンスを逸したかに思われたが、そのこぼれ球を自ら拾うと、角度のない位置から冷静に左足を振り抜き、早々に先制ゴールをもたらした。

 さらに41分にはPKで2点目を奪うと、後半立ち上がりの48分には強烈なヘッドを叩き込み、今季2度目となるハットトリックを達成した。これで今季のゴール数を21に伸ばし、2位のレアンドロ・ダミアンに3点差をつけ、得点ランクのトップを快走する。

「(得点王に関しては)そこまで意識していないと言えば嘘になりますが、チームメイトが僕に点を取らせてくれるようにしてくれているので、それに応えないといけない。ただ、チャンスがあったなかで3点しか取れなかった。そこは反省しないといけない」

 ハットトリックに満足せず、高い意識を保ち、さらなる上を目指し続ける。横浜FMの新たなエースに成長した前田の得点王獲得に、いよいよ現実味が帯びてきた。

 自らの得点シーンだけではない。マルコス・ジュニオールのPKによる2点目は、エリア内で仲川輝人が倒されたことで得たものだが、巧みなヒールパスで仲川にボールをつないだのは前田だった。さらに69分の小池のゴールは、前田がレオ・セアラにくさびを打ち込んだことが発端となり、84分のオウンゴールも、水沼宏太の右からのクロスに反応し、ニアサイドに飛び込んだ前田が誘発したものだった。

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