U-24日本代表・田中碧「勝ったからいい」。最終的に好成績を残すチームの初戦は得てしてこういう試合 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by JMPA

 それでも吉田は、「大会前から総力戦になるという話をしていたし、何かしらのアクシデントはあるだろうなと思っていた」と言い、こう続ける。

「まさか、しょっぱなに起こるとは思っていなかったが、(決勝までの)6試合を中2日(決勝のみ中3日)でずっと戦っていくうえでは、必ずいろんな選手の力が必要になるし、11人だけでは戦えない。いい準備をして、全員で戦うことが大事。冨安もいい状況に戻して、早くチャンスをつかめればいいなと思う」

 冨安のケガが痛いアクシデントであるのは間違いないが、主力選手を欠いた時、代わって出場した選手がしっかりと求められる役目を果たすことは、こうした大会を勝ち上がるうえでは重要な要素となる。

 むしろ、こうした事態こそがチームをひとつにし、勢いに乗せると言ってもいいほどだ。

 大事な初戦、冨安の抜けた穴はDF板倉滉が確実に埋め、もともとはバックアップメンバーだったFW林大地、DF町田浩樹もピッチに立った。総力戦に挑む準備は整っている。

 2012年ロンドン五輪では、あと一歩のところでメダルを逃した悔しさを知る吉田は、自信に満ちた表情で語る。

「もっともっとできるなと思う。もっともっとできるし、こんなもんじゃないなっていうのは、正直思っている」

 もっともっと――。キャプテンは力を込めて、そう繰り返した。

「もっともっと思いっきり自分たちを出さなきゃいけないなと思うし、そうなれば、ロンドンを超えられるんじゃないかなと思う」

 内容的に言えば、ケチのつけどころはあちこちにある。当然、物足りなさは残る。

 だが、選手たちもそれをよく理解している。未完成だから抱ける期待もある。

 メダル獲得へ、ホスト国が上々のスタートを切った。

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