古橋亨梧が前線で何度もポジション変更をした理由。日本代表定着へ国内組の希望となるか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 日本も今や、欧州組だけで代表メンバー全員を組める時代になっている。昨年の欧州遠征ではその陣容で戦った。コロナ禍という事情があったからだが、その後も国内組で代表に入る選手は限られている。

 欧州組と国内組の違いは何か。ひとつには、欧州の戦場を舞台にした選手は"重厚感"がある。高い強度の中で自分のプレーを出し、変化の中でさらに最善の選択を迫られる経験を繰り返しているからだ。

 その点で、国内組が半数以上だったタジキスタン戦は、いくらか物足りなかったかもしれない。2次予選初の失点となったシーンは目を覆うばかりだった。クリアし切れず、甘いマーキングでクロスを許し、クロスに対するマークもルーズ。すべてに国内組の選手が関与していた。

 こうした失点は、高いレベルの相手には致命傷になりかねない。その後は橋本拳人(ロストフ)、鎌田大地(フランクフルト)など欧州組が存在感を示し、どうにか挽回した。やはり彼らの重厚感は頼もしい。戦局に動揺せず、試合を進めることができる。

 しかし、攻撃陣に存在感を示したJリーガーがいた。先制点を決めた古橋亨梧(ヴィッセル神戸、26歳)は、国内組の希望だろう。

タジキスタン戦でフル出場した古橋亨梧(ヴィッセル神戸)タジキスタン戦でフル出場した古橋亨梧(ヴィッセル神戸) 前半6分、右サイドから長めのスルーパスが出た時、古橋はすかさず反応している。それに走り込んだのは浅野拓磨(無所属)でGKとの1対1を外すのだが、古橋は後方からそのこぼれ球に反応し、相手選手ともつれながら五分のボールを収め、左足でゴールに突き刺した。

 古橋の価値が見えたシーンだった。

 彼のプレーにはひ弱さがない。俊敏で、爆発的なスプリント力を持っているが、そこに依存せず、粘り強く泥臭く戦える。相手と駆け引きを続けながら、味方と呼吸を合わせ、何度も動き直し、しつこくゴールにアプローチできる。プレーの連続性は、海を越えてプレーするアタッカーたちと共通する点だろう。

 これは所属する神戸の環境も強く影響しているだろう。アンドレス・イニエスタとプレーすることは天恵に近い。

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