2-0勝利とその中身をどう捉えるか。日本は試合の整え力を欠いている (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyma Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 その10分後、堂安律(PSV)のクロスを南野拓実(ザルツブルク)がヘディングで決めて2-0とすると、引き分ける可能性は限りなくゼロに近づいた。サッカーにとって2-0ほど危ないスコアはない。1点奪われれば流れが変わり、同点とされることはよくある――とは、テレビの解説者が口にするお決まりの台詞だが、ミャンマー相手にその心配は要らなかった。この2点目は、ダメ押しゴールに値した。

 この前半26分の時点で、勝負は決したも同然だった。普通の監督なら、後半の頭に1枚目の交代カードを切るだろう。省エネモードに切り替えようとする。
 
 だが、日本はそうはしなかった。こう言っては何だが、これは格好のいい采配とは言えない。勝ち点を落とすことを極端に恐れた手堅すぎる采配だ。なにより選手がそれを感じているはずだ。彼らもいろいろな監督のもとでプレーしているので、常識から逸脱した采配には敏感になる。

 森保監督が振るった最初の交代は後半21分。堂安と伊東純也(ゲンク)の交代だった。2人目は31分の南野と鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)の交代で、3人目は後半36分の中島と久保建英(マジョルカ)の交代だった。パラグアイ戦から継続する流れと試合展開を考えれば、遅いと言わざるを得ない。

 テスト色の薄い大真面目な戦いを日本は最後まで演じた。2-0で終わらせようとはせず、それこそ5-0、6-0を目指して全力で戦った。交代で入った伊東や鈴木はアピールしたかったこともあるだろう。果敢にゴール前に進出。ゴールを狙った。

 こういうケースで、欧州などでよく見かけるのは、ピッチを広く使い、大きくパスを展開するプレーだ。後半、大迫勇也(ブレーメン)が、ミャンマーのレベルの低いディフェンダーに後方から蟹挟みのようなタックルも浴びるシーンがあった。こういう試合でエースストライカーをケガで失うほど馬鹿げた話はないのである。

 本来、アウェーで求められているのは、そうした危険な接触を避けながら、そしてボールを奪われる場所に注意しながら、時計を進めようとするプレーだ。3点目は、そうした流れの中で「生まれたならラッキー」ぐらいの感覚で十分なのだ。ところが日本は、最後まで必死になって攻撃したうえに、追加点も奪えなかった。

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