W杯で苦しむなでしこジャパン。カギを握るのは負傷離脱組の復帰 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 結局、中島は攻守にわたって健闘したとはいえ、後半にサイドハーフに戻ってからの方が持ち味を発揮できていたのも事実。イングランド戦でこの布陣を持ってくるのであれば、連動する周りの選手が距離感を把握するためにも、ある程度の実戦経験を積ませておく必要があった。実際、ワールドカップイヤーでチーム作りが佳境に入ってからも、中島がボランチに入ったのは3月のブラジル戦のみ。今後のオプションとしての可能性が見出せたとも言えるが、それは大会前に済ませておくべきことだった。そうすれば、この試合でさらに幅のあるプレーが表現できていたかもしれない。

 また、ノーゴールに終わった攻撃陣だが、何もできなかったわけではない。他のGKであれば入っていたであろう横山のFK、中島の中央からのシュートや岩渕のドリブル突破などチャンスはあった。後半には菅澤優衣香(浦和レッズレディース)、三浦成美(日テレ・ベレーザ)を投入し、イングランドを上回る15本のシュートを放っている。菅澤には2度の決定的場面もあったが、ゴールを決めきる選手がいなかった。

 このチームの本領はまだ発揮されていない。逆境に立ったときに強さが開花するのが、なでしこジャパンだ。昨年のアジアカップ、アジア大会でも崖っぷちから這い上がり、壁をぶち破りながら頂点に立った。

 決勝トーナメント一発目の相手は強豪のオランダになった。当然苦しい時間帯の方が多いだろう。それでも、2位通過をポジティブに捉えるなら、次戦まで中5日というメリットがある。今一度チームを奮い立たせるには十分な時間だ。なでしこたちが身に着けた修正力をフル稼働すれば、高倉監督が目指す戦いが必ずできるはずだ。

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