「森保式3バック」とトリニダード・トバゴ戦
無得点の重大な関係

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 パスワークに受け手と出し手の2点間の関係しか見えてこない弱小トリニダード・トバゴに、ほぼベストの陣容でホーム戦を戦い0-0。日本が押していたからといって、優しい声を掛けるわけにはいかない。しかし、いまこの一戦を終えて、そのだらしない結果より先に、触れなければならないテーマが浮上している。
 
 ズバリ、布陣だ。このトリニダード・トバゴ戦を、森保一監督は、就任以来、採用してきた「4バック」ではなく「3バック」で戦った。予想されたことではあった。来るときが来た、とは正直な感想だ。

ほぼベストメンバーながら、トリニダード・トバゴ戦で無得点に終わった日本代表ほぼベストメンバーながら、トリニダード・トバゴ戦で無得点に終わった日本代表 森保監督はサンフレッチェ広島の監督時代、一貫して3-4-2-1を採用していたからだ。その前任監督であるミハイロ・ペトロビッチ(現北海道コンサドーレ札幌監督)が採用していた布陣を継承した格好になるが、代表監督に就任しても森保監督はてっきりこの布陣を使用するのかと思った。

 ところが森保監督は4バックを選択する。なぜ、という疑問はつきまとった。そのあたりに質問が及ぶと「臨機応変」とか「柔軟な対応」などという言葉でかわそうとした。少なくともこちらにはそう見えた。

 森保監督は兼任監督で、東京五輪を目指すチームの監督というもうひとつの肩書きがある。その中核を成す現在のU-22日本代表は、ロシアW杯直後、A代表の活動に先駆けてアジア大会に出場。そこで森保監督は3-4-2-1を採用した。

 U-22代表はその後、森保監督がA代表で多忙になったため、横内昭展コーチが代行監督の任に就いているが、同コーチもまた3-4-2-1を採用している。森保監督と横内コーチは広島でも同様な関係を築いてきた間柄だ。3-4-2-1を選択するのは自然な流れに見える。

 A代表の森保監督だけ、なぜ4バックを採用するのか。

 きたるコパ・アメリカ(6月14日開幕)に参加する日本チームの主体は、主に横内コーチが指揮してきたU-22のメンバーだ。A代表のメンバーは、U-20組でもある久保建英、大迫敬介を加えても9人止まり。融合させる方法を探ろうとしたとき、3-4-2-1は自ずと浮上する最大公約数的なアイデアになる。このトリニダード・トバゴ戦と次のエルサルバドル戦(6月9日)は、そういう意味で、テストを行なうに相応しいタイミングだった。

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