なでしこジャパンのボランチ問題。最適解は見つからず課題は山積みだ (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 現在、日本の中盤は人材不足状態だ。阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)のケガの回復を待ちながら、なんとか厚みを作ろうとしているなか、この試合で新たなボランチの可能性を探った。しかし、市瀬と杉田のコンビはハマり切れず、ボールキープから攻撃への切り替えでは、大きな課題を残した。だが、互いを意識したポジションのバランスなどはスムーズだった。

 ボランチは重要なポジションなだけに、今日明日で形になるものではない。それでもスペインを相手に、感じ取った課題を確実に次で改善するという修正力があれば、これもバリエーションの候補になる。何より、市瀬、杉田ともに世界大会レベルのスピードの中で対応する感覚を一刻も早くモノにしなければ、本大会を戦い抜くのは厳しいだろう。

 いいところもあった。つかみどころのない試合にしないために、選手たちの工夫の末に生まれたのが86分の同点ゴールだ。DF鮫島彩(INAC神戸)のスローインは完璧だった。杉田の相手ディフェンス裏への飛び出すタイミングも絶妙。そして杉田からのラストパスは、中に滑り込んだ菅澤の右足にピタリと合った。

 このゴールが決まるのと決まらないのとでは雲泥の差がある。この時間帯で、誰一人諦めずに集中力を持続して、もぎ取った1点。ここは、どんどん高めていってほしい感覚だ。この試合で課題はさらに増えたが、それでも、アジアカップやアジア大会で苦しみながらも結果を残し、「なんとかしてきた」のが、なでしこジャパンの本領だ。

 この試合を徹底的に分析して、新たな解決策を選手たちは見つけ出すはず。ここから初戦までは1週間。時間との戦いになりそうだ。

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