トルシエに頭をつかまれて
バケツにつっこまれた男・永井雄一郎の回想 (2ページ目)
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久しぶりに日本人のチームに入り、年齢的にひとつ下の小野伸二たちとプレーすると、永井は愕然としたという。
「当時のドイツは、1対1の戦いに勝つ、相手のよさを潰す、というサッカーだった。技術よりもフィジカルの要素が強くて、その中でも自分は技術が高い方だと思っていたんです。でも、伸二たちとプレーしたら正直、ヤバいって思いました。技術がめちゃくちゃ高いんですよ。いつの間にか、すごく差がついているなって思いましたね」
トルシエに高い評価を受けた永井は、最終的にナイジェリアワールドユースを戦う18名のメンバーに選出された。そして、レギュラーとして試合に出場するが、なかなか結果を出せずに苦しむことになる。
初戦のカメルーン戦は逆転負けを喫したが、つづくアメリカ戦には3-1で勝った。そして、グループリーグ最終戦のイングランド戦を迎えた。永井は、準決勝で決勝ゴールを挙げたウルグアイ戦ではなく、この試合が最も印象に残っているという。
「イングランド戦で1対1を外したシュートシーンがすごく頭に残っているんです。『やっちゃったなぁ......』みたいな。夢中で走って裏に抜けたのはいいんですけど、シュートを流れのままポンと適当に打ってしまったんです。周囲から見ても、絶対に適当に打っただろうなって感じだった。もっと何かできたはずなのに流れで打ってしまって、『なんだかなぁ』と思いましたね」
イングランド戦は、グループリーグ3試合目の最終戦だった。
大会前は、好調を維持していた。事前キャンプでの練習試合やブルキナファソ合宿での練習試合でもゴールを奪い、点を取れる感覚が自分の中にあった。
だが、大会に入るとピタリと快音が消えた。
そして、決勝トーナメントに入っても永井は沈黙したままだった。
「前回も大会に入る前は点が取れていたけど、大会に入ると取れなくなって、ナイジェリアでもその状況とかぶり始めてきたので、『これはまずいぞ』って思っていました。あんまり動けていないし、結果を出せていない。自分がチームの役に立っているのかなぁって思っていて......。みんなの高い能力を感じていたので、自分が置いていかれるような感覚もありましたね」
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