乾貴士が見せた「気遣い」。
的確なアドバイスで若手を生かす (2ページ目)
「約束事ではなく、自分で勝手にやった」というインサイドに絞る動きも、畠中の特徴を生かしやすい状況を生み出した。
「乾くんもあそこで受けたいって言ってますし、もしあそこで中を閉められても、今度は幸輝が外で空く。その攻め方は(所属クラブである)マリノスでやっている形だったので、自分としてはすごくやりやすかったです」と、畠中も乾の動きに感謝の意を示した。
乾のサポート力は、畠中に対してだけではない。同サイドでコンビを組んだ安西に対しても、同様の気遣いがあった。
「乾くんが中に動き出してくれるので、外のスペースをうまく使えました。今日に関しては、乾くんに任せっきりでしたね。引っ張ってくれたんで、すごくやりやすかった」
安西は前回のコロンビア戦で初キャップを刻んだものの、この試合が初スタメン。ハーフタイムには的確なアドバイスをもらったという。
「走るコースが少し外だったので、もう少し中にしてくれって言われました。それがうまく合って、後半はふたりの連係からチャンスを作れる場面が増えたと思います」
実際に、前半はサイドの連動性が足りなかったが、後半立ち上がりにはボールを受けた乾が外を駆け上がる安西を使う場面も増加。要求、サポート、そして修正を繰り返した結果、生まれたのが、58分の決定機だった。
中に絞った乾に、畠中がくさびを通す。ボールを受けた乾は、この場面ではサイドを駆け上がった安西をおとりにし、中に持ち込んで鎌田大地(シント・トロイデン)へと絶妙なスルーパスを供給。鎌田はGKの対応にあいシュートにまで持ち込めなかったが、確かな意図と連動性が備わった崩しのシーンだった。
もっとも乾は、黒子役に徹していたわけではない。23分に決定的なシュートを放つなど、主役となれる可能性もあった。
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