加速する大迫依存。イラン戦で覚醒した森保Jを素直に喜んでいいのか (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

 では、なぜこうも試合内容が一変したのか。

 実力が拮抗したチーム同士の対戦でも、ときにちょっとしたかみ合わせの具合によって、一方のチームだけがやることなすことうまく行き、思わぬ大差がついてしまうことがある。このイラン戦もそんな試合のひとつではあるのだろうが、あえて日本側にその理由を求めるなら、もはや思い当たることはひとつしかない。

 FW大迫勇也(ブレーメン)の復帰である。

 ケガでしばらく戦列を離れ、グループリーグ初戦以来の先発出場となった大迫の存在が、攻撃を滑らかに回転させる中心軸となっていたのは間違いない。背番号15が縦パスを引き出し、それを合図に、2列目、3列目から選手が飛び出してくる。そんな流れるような攻撃が、久しぶりに何度も見られた。

 大迫が日本代表をチームたらしめたのは、攻撃面だけではない。印象的だったのは、後半40分のシーンだ。

(イランから見て)右サイドでのイランボールのスローインが、相手の右センターバックに渡ると、大迫はそこへ目がけて猛ダッシュ。大迫のプレスを逃げるように、パスが左センターバックにつながれると、大迫はなおもボールを追いながら、視線を右に送った。大迫の動きに連動して、MF堂安律(フローニンゲン)が相手の左サイドバックにプレスをかけていれば、そこで"詰む"ことができるからだ。

 しかし、堂安はすでに下がった位置にポジションを取っていたため、大迫はスピードを緩めてボールを追うのを止めた。すると、堂安が「ゴメン」とでも言うように右手を上げ、大迫に合図。結果的にプレスからのボール奪取は未遂に終わったが、プレーの意図やタイミングを周りに伝えようとする様子は、守備面においても大迫が、チームをチームとして機能させるためのリーダー的役割を担っていることをうかがわせた。

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