森保一を深く知るドクターからの伝言。「気遣いの人だけどワガママであれ」 (2ページ目)

  • 木村元彦●文 text by Kimura Yukihiko
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

――マツダ入社後も最初の2年間はトップチームでの出場もままならなかった。どこから変化があったのでしょうか。

「僕が見ていて一番変わったと思ったのは、(風間)八宏がチームに来てからです。最初に(ハンス・)オフトにディシプリンという言葉を叩きこまれて、それを実践した。次に監督がビル・フォルケスの時にデビュー戦を飾って、ちょっと自信を持ったと思うんですよ。ただ、その時2部で1部に上がれなかったんです。次の年に八宏がドイツから来て、とにかくプロ根性を叩きこんでくれた。森保はそれを吸収しようと思って、とにかくベッタリついていましたからね。公式戦でベテランの選手がラフプレーで退場になって結局負けたときがあったんです。試合が終わった後、シーンとしている中でそのベテランがねぎらいの意味で笑わせたりとかしたんですよ。そうしたら、八宏がパッと立って、『てめえ!』って怒鳴った。先輩ですよ。『オメエのせいで負けたのに、何ヘラヘラ笑ってるんだ』って。プロとしてはこうだという部分を見ていて。とにかく八宏にピッタリついていました」

――先日、今西和男さんに「森保代表兼任監督誕生ですね」と聞いたら、開口一番「かわいそうじゃ」と言ったんですね。こんな激務をよく引き受けたと。「断り切れんかったかもしれんけど、こんな大変なことを簡単にオッケーと言ったら普通はあかんのじゃ」と。実際、五輪代表とA代表の兼任は大変な仕事ですよね。

「(2002年に兼任していた)フィリップ・トルシエの時、選手選考のための視察は半分やっていなかったようなものでね。でも、森保は本当に徹底的に見るから。彼がサンフレッチェの監督の時だって、ジュニアユースからユース、全部見ていましたからね。体が3つ4つあっても足りない。だから、一番心配しているのはそこですよね。スタッフの中に横内(昭展)が入ったので少しは楽になるかもしれないけど。ただ、人材がグローバルではないですよね。だから、そこら辺はこれから、テクニカルな部分で、例えば戦術もそうだけど、ある程度分析をする中にそういう人たちを入れていかないと。今年のワールドカップだってこれまでと全然違うじゃないですか。勢力図も違ってきちゃったし。そりゃイタリアは出られないよ、っていう。(日本対)ベルギー戦は確かに僅差でしたけど、あれは前半からガチで来られたら終わっていましたよね」

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