森保一を深く知るドクターからの伝言。「気遣いの人だけどワガママであれ」

  • 木村元彦●文 text by Kimura Yukihiko
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 日本リーグのマツダ時代から2016年まで、30年近くサンフレッチェ広島のチームドクターを務めていた寛田司は、スポーツ医学の世界ではまさに「知る人ぞ知る」という存在である。2007年に川崎フロンターレ時代の我那覇和樹がドーピング冤罪事件に巻き込まれた際、当時浦和レッズの常勤医師だった仁賀定雄とともにJリーグの全チームドクターをまとめ上げ、真実を明らかにしてこの沖縄が生んだ初の日本代表FWを言われのない罪の中から救い出した。寛田の精確なアンチドーピング知識は2016年に千葉和彦(サンフレッチェ広島)の尿検体が陽性反応を示した際にも発揮され、自身を使った人体実験まで施して千葉本人に落ち度が無いことを証明している。ドクターとしてプレイヤーズファーストの精神は徹底しており、当然選手たちからの信頼は厚い。寛田にはすべてをさらけ出して相談に来るという現役選手やOBは数知れない。その寛田にマツダに入団して以来からの親交が続く森保一日本代表監督について話を聞いた。

森保監督が選手時代から信頼している寛田ドクター森保監督が選手時代から信頼している寛田ドクター

――出会った当時の印象を教えてください。

「ぽいち(森保)は1987年に入ってきたんですが、とにかく細くて華奢(きゃしゃ)でね。マツダは結構ガタイのしっかりした選手が多かったんですよ。だから余計に『こいつ、大丈夫かな』と思って。先輩からは宴会の一発芸なんかでよくイジられるキャラでしたね。結構怪我も多かったけど、今で言う鼠径部痛症候群をやって手術したのかな。印象的だったのが、自分から『ここが痛いんですけど、診てもらえますか?』って、新人だけど言ってくるんです。若い頃は先輩たちがいると遠慮するというのがよくあるけど、彼は自分の主張をちゃんとしていましたね。体のメンテナンスは自分でするものだと分かっていたんです」

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