なでしこが反省だらけも嬉しい優勝。数々の挑戦と守備の向上を見せた (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 ここで踏ん張ったのが守備陣。クロスを警戒していたが、予想を裏切り中央突破やコンビプレーなど、多彩な仕掛けを見せた中国に翻弄されながらも、最後のところはサイドバック、ボランチのみならず、全員で体を張った守備を90分間貫いた。その甲斐あって、GK山下杏也加(日テレ・ベレーザ)のところではコースも限定でき、何本ものシュートストップにつながった。

 この粘りは4月のAFC女子アジアカップでも見られたが、今大会では準々決勝から優勝を決める一瞬まで途切れることはなかった。これまでは肝心なところでミスからの失点で先行されることも多く、先に失点すると勝ちきれない弱さがあった。今大会では先制を許した試合は1試合もない。それだけ、粘る守備を体現できるようになっている証だ。

 攻撃面では、決勝でこの1カ月間をほぼ同じメンツでやってきた集大成を見たいところだったが、たとえチャレンジ性を考慮した上でも、残念ながら収穫と明確に言えるものはなかった。

 パスを封じられたのであれば、それに代わる手立てをピッチで見つけなければならない。当初のテーマと多少変わることがあっても、それは致し方ない。鮫島の言うように、あえてチャレンジするところと、変えていくところのライン設定を選手間で共有する必要がある。それが整えば、決勝ももう少し戦いやすくなったはずだ。

 ところが、これだけ劣勢でありながら、90分の決勝弾は見事だった。岩渕の右奥へのパスに、反応した中島がダイレクトで折り返したところを当たっている菅澤優衣香(浦和レッズL)がダイビングヘッドで押し込んだ。スイッチを入れた岩渕からフィニッシュまで寸分の狂いもなく、日本らしい崩しに、この日途中出場だった菅澤の執念も盛り込まれたゴールは、たとえ中国の足が止まった後半であったとはいえ、この時間帯に仕留めることは簡単ではない。この強さは今までになかったものだ。

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