なでしこジャパンが「チーム」になった。
ベテランたちが初めて笑った (4ページ目)
苦しんできたのは、若手や新加入選手だけではない。どの選択がこのチームにとっての正解になるのか、答えがない中で牽引しなければならなかった上の世代こそ、苦悩の連続だった。
苦虫を噛みつぶしたような渋い顔が多かったベテラン選手たちが、優勝のホイッスルが吹かれた瞬間、解き放たれたような笑顔を見せた。鮫島は両の手を押し上げ、同じく笑顔満開の熊谷と抱き合った。宇津木は噛みしめるように空を見上げた。阪口は......ガッツポーズで飛び跳ねた。普段は絶対に見ることができない姿だ。このチーム発足以来、初めて見せる牽引者たちの弾ける笑顔に、このチームが得たものを見た気がした。
もちろんチームを引き締めることも忘れない。「勝因を"粘り強さ"にするのは悔しい部分もある。守備面では確かにそれによって成長したけど、このままではワールドカップは戦えない」と言うのは熊谷。
ただ、絶対的にこれまでと違ったのは、選手間で映像を見る時間の多さだ。前半を見終えるまでに1時間半もかかるというのだから、まさに受験勉強なみ。以前は、次は誰が招集されるかすらわからない状況で参加者は少なかった。今大会はとにかく選手間でのミーティングが増加した。
ゼロからスタートした高倉監督率いるなでしこジャパンが2年を経て、ようやく戦える集団となった。迷いようのない確固たるベースを築き、それが優勝という形で初めて証明された。完全ではないからこそ、この優勝には意義がある。過信ではなく自信につながる優勝となった。
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