なでしこジャパンが「チーム」になった。
ベテランたちが初めて笑った (2ページ目)
一方で、確かにオーストラリアには押し込まれ、15分にはPKを献上するこの試合最大のピンチもあった。「自作自演」と本人も苦笑いの、GK山下杏也加(日テレ・ベレーザ)の処理ミスからPKが生じ、本人の好セーブで事なきを得たというプレーだった。
いずれにしても、スコアレスでで折り返しながらも攻撃は、前回対決に比べてはるかにバリエーションが生まれていた。
誤算は、日本が優勢に持ち込みたかった後半に、オーストラリアの足が止まる気配がなく、ほとんど形を作らせてもらえなかったことだ。防戦一方となり、とにかく攻撃につなげることができなかった。
残り20分を切ったところで、高倉麻子監督が切り札としてピッチに送り出した横山も、まったくボールに触ることができないまま時間が経過していた。
後半に訪れたチャンスはたった一度。横山はそのボールが入る前に感じ取っていた。
「これ、来る。このチャンスで決めないきゃいけない」(横山)
背に相手の気配は感じていたが、長谷川からのパスは申し分なかった。直前に相手の間にスライドした横山のポジショニングも完璧だった。反転から「一度シュートにいこうと思った」が、相手の位置を確認して、すぐさま切り返して距離を残しながらも思い切り右足を振り抜いた。
最後までボールから目をそらすことなく、ゴールまでの軌道を確認した横山はよろこびを爆発させると、「とにかく一発頼むよ」とピッチに入った際、声をかけられていた阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)の元へ全力で駆け寄った。残り6分を切った段階で生まれたこのゴールが、日本を優勝に導いた。
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