【なでしこ】高倉イズムを理解できない選手はU-20に追い抜かれる (4ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 ここでキーになるのが阪口だ。4-1-4-1の視野の中でも状況によって阪口が下がれば、4-4-2にも4-2-3-1にもなり得る。彼女のポジション取りひとつで変幻自在な布陣ができる。高倉監督の構想では、阪口は高い位置でプレーさせたい。となれば、中盤の底を誰が見るのか。熊谷だけでなく、誰が担おうとこのバランス感覚は容易に身につくものではない。しかし、攻撃の幅は確実に広がるだけに、この形も捨てがたい。現在は前めの選手が個性豊かであることから、つい阪口が引いてしまいがちになる。

「もう体に染み込んでしまっている(苦笑)」と阪口本人も感じている長きに渡って培われたボランチ感覚。その彼女の感覚に救われていることも事実で、下がれば抜群の安定感を生み、上がれば驚異の攻撃力となる。阪口を高い位置で生かすことができる人材の台頭が切望される。

 明るい材料として筆頭にあげたいのが佐々木の成長だ。スウェーデン戦では右サイドハーフとして、テストマッチではボランチとしてスタメンを勝ち取った。スウェーデン戦では熊谷のシュートを促したように、パスで味方を生かしたかと思えば、次の場面では最前線に顔を出してフィニッシャーにもなる。ボランチに位置しながら前後に動き、阪口からのDF裏への縦パスにも反応してみせた。

 今年2月、U-23で臨んだラ・マンガ国際大会が初の大舞台という真っさらな選手だけに吸収力はチーム1。ピッチを離れれば、ぽわんとした普通の女の子という印象だが、ひとたびピッチに入れば真逆の姿に変わる。クレバーで、テクニシャン。判断力、戦術理解度も高い。「ああいう選手が11人揃ってほしい」と高倉監督も賛辞を贈るほど。

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