2014.09.10

香川真司や柿谷曜一朗にはない、左ウイング武藤嘉紀の武器

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi ヤナガワゴーッ!●撮影 photo by Yanagawa Go

 その瞬間、時が止まったような感覚だったという。

 アギーレジャパン2戦目のベネズエラ戦。0-0で迎えた51分、岡崎慎司と相手DFが競ってこぼれたボールをセンターサークル付近で拾った武藤嘉紀が、ドリブルを開始した。追いすがるDFのファウルまがいのタックルを跳ねのけ、なおも武藤は加速して敵陣に進入していく。そして、ペナルティアークまでたどり着いたところで思い切り左足を振り抜くと、ベネズエラのゴールネットが大きく揺れた。

代表2試合目で早くも初ゴールを決めた武藤嘉紀「(大歓声は)あまり聞こえなくて、なんか面白い感覚でした。集中していたのかな。歓声より、決めちゃったんだなって。時が止まった感じ」

 ブラジルW杯で惨敗した日本代表を立て直すため、日本サッカー協会はメキシコ人のハビエル・アギーレを新監督として招聘した。その新体制の、武藤は今やシンボル的存在だ。ルーキーながら代表に選ばれ、9月5日のウルグアイ戦の58分に、さっそく代表デビュー。ポストを叩く惜しいシュートを放つと、ベネズエラ戦では代表2試合目にして初ゴール。これが、アギーレジャパンのファーストゴールになった。

「監督からは、ムイビエン(スペイン語でとても良かった)と言われました。選ばれたころは嬉しかったですけど、今は代表に定着していきたいという気持ちが一番にあります」

 メキシコ人指揮官の大胆な起用によって、代表チームに新たな血が注入された。武藤嘉紀とメキシコ――、この組み合わせに不思議な縁を感じずにはいられない。かつて、武藤が自分の力で運命を変えた場所、それがメキシコだったのだ。