【U-23】東アジア大会惨敗も、なでしこ「狭間世代」に芽生えた決意 (3ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

「短期決戦でも積み上げていかなきゃいけないものもある。一つ一つクリアして最終戦で自分たちのベストの形が作れればと思ってます」と話したのは、ボランチに起用された齋藤あかね(浦和レッズレディース)だ。なんとボランチ初体験。「選手が離脱していって、残った選手を見たとき、消去法で、あれ?ひょっとして私がボランチかな?って、なんとなく覚悟はしてました(笑)」167cmの身長は日本では恵まれた体格と言える。

 もともと前線でプレイしていたが、U-20女子代表で佐々木監督と出会い、サイドバックへコンバートされた。「あのときも驚きましたけど(笑)」(齋藤)、今回は攻守の要・ボランチに大抜擢。初戦でボランチを組んだのは小林海青(日テレ・ベレーザ)。ともに初めてのポジションだった。夜はビデオで徹底研究。なでしこジャパンのゴールデンボランチコンビの澤穂稀&阪口夢穂のプレイを何度も見た。「ウチらもこれやろう!」と、ボランチのタテのバランスを常に意識した。勝手がわからなかった中国戦の反省を踏まえて、北朝鮮戦では積極的にゴールも狙った。

 今大会では、身体を寄せられてピッチに転がっていく日本選手をよく目にしたが、強く当たられても齋藤の身体はブレなかった。「自分がやることで他の人が『もっと自分もやらなきゃ』って思わせるプレイを意識した」という齋藤。わずか10日のボランチ歴ながら存在感は十分だった。佐々木監督が求めていることを感じ取っていたかのようなプレイに「ボランチとしての体力はないけど、寄せの強さがあって、フィードもできる。可能性はありますよ」と、指揮官もまずまずの様子だ。

 他にもマルチプレイヤーの片鱗を覗かせた齋藤夏美(バニーズ京都SC)や、時折サイドから切り込みを見せた吉良知夏(浦和レッズレディース)、タイペイ戦でハットトリックを達成した植村祥子(日本体育大学)ら、素質を持った人材も奮闘したが、なでしこジャパンレベルとの隔たりは大きい。

「ここからなでしこチャレンジに何人呼べるか」と話した佐々木監督。"なでしこジャパン"ではなく、予備軍である"なでしこチャレンジ"入りのラインがここだという現実を選手たちも受け止めている。「どれだけ自分が上の人たちに引っ張ってもらっていたか痛感しました。足りないことだらけ」と菅澤が悔しさをにじませれば、「個人で打開する力をつけないとダメ。国内でできなきゃ、アジアでだって通用しない」と決意を新たにしたのは吉良。アジアとの差、なでしこジャパンとの差、これまで漠然としていたものが、すべて目の前に炙(あぶ)り出された。厳しい現実だからこそ、ここからは上がっていくだけ。具体的な課題を手土産に、U-23女子代表の戦いは終わった。

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