柿谷の決勝ゴールを生んだ即席チームの修正力 (3ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • スエイシナオヨシ●写真 photo by Sueishi Naoyoshi

 守備陣に目を向ければ、コンディション不良によってベンチに下がった槙野に代わり、右サイドバックに入った徳永悠平の奮闘が光った。前半、対応に苦戦し、ゴールを決められたユン・イルロクを封じると、途中から右サイドハーフに起用された山田大記の守備意識も高く、右サイドが安定する。

「もう少しボールが収まれば攻撃参加したかったけど、どうしても守備の時間が長くて……。(山田)大記も守備に追われて可哀そうだったけど、そこは割り切って、自分の役割をまっとうしてくれたと思う」と、徳永が山田のことを気遣えば、センターバックの森重真人は「(徳永)悠平さんの安定感がこの試合のキーポイントだったんじゃないかと思う」と、徳永の奮闘を労(ねぎら)った。

 さらに、87分に登場した豊田陽平が前線からのプレスを強めてチームを助けると、90分、この日2度目のビッグチャンスが訪れる。「89分間、守備に追われていた」という原口が左サイドを突破してシュートを放つと、GKが弾いたところを柿谷が左足で蹴り込んで勝ち越しゴール。優勝という結果を手繰り寄せた。高萩は言う。

「勝ち切れたのは、もう(柿谷)曜一朗の決定力のおかげ。広島にも(佐藤)寿人さんがいますけど、ああやって決めてくれる選手がいると、僕らは信頼して守備をして、頑張って耐えて、ボールを奪って預けられる。信頼できる選手が前にいてくれるのは、チームにとってすごくプラスのことだと思います」

 守備陣が身体を張ってゴールを守り、エースがふたつのチャンスをいずれもモノにした。その陰には後半から修正したミッドフィルダーたちがいて、役割をまっとうした途中出場の選手たちがいた。わずか10日間だけの即席チームも、終わってみれば解散してしまうのが残念なくらい好チームに成長していた。

 果たして、この中から何人の選手が、8月のウルグアイ戦のメンバーに選ばれるのか、楽しみである。

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