【なでしこ】 問われる佐々木監督の手腕。なでしこジャパンを取り巻く世界の強豪の現在地 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko/JMPA


 世界では、ロンドン五輪で金メダルを獲得したアメリカも勝負の時期。日本を苦しめたエース、モーガンは伸び盛りだが、なでしこのようなつなぐサッカーでパワーサッカーからの脱却を図り世界一へと導いたズンドハーゲ監督が勇退。続く指揮官がどのようなチーム作りを目指すのか注目される。

 2011年のW杯で日本に敗戦したドイツは五輪の舞台に足を踏み入れることすら許されなかったが、見方を変えれば、他国よりも早く次世代のチームづくりのスタートを切ったことになる。選手層が厚いドイツは抜群の安定感を見せてくるに違いない。

 そして、今後女子サッカーシーンをにぎわせそうなのがフランス。ロンドン五輪では技術とパワー、組織力を兼ね備えた唯一のチームだったと言っていいだろう。そのほとんどの選手がオリンピック・リヨンでプレイする――。すなわちシーズンを通して強化を行なっているようなものだ。

 さらに古豪復活を目指し、アメリカで指揮を執ったズンドハーゲ監督が率いることになったスウェーデン、手堅い戦術手腕で定評のあるハードマン監督によって自国開催となる2015年W杯へ向けて強化を重ねるカナダも不気味な存在になりそうだ。

 ユース年代の戦いぶりからも将来性をはかることができる。ロンドン五輪直後に日本で行なわれたU-20女子W杯では、アメリカがトップチームのロンドン五輪制覇に続いて優勝を手にした。爆発的な強さこそなかったが、決定機を逃さない攻撃陣と崩れない守備が光っていた。

 また、圧倒的な攻撃力を見せたドイツは次の世界大会の戦力としてトップに入る可能性のある選手が多い。

 対して日本は、地の利を最大限に活かし、高い技術力で3位に入った。FKを左右両足で蹴りわけた田中陽子や、試合展開をコントロールした猶本光らの活躍が注目を集めたが、まだまだ乗り越えなくてはいけない壁があると言っていいだろう。

 アジリティ(敏捷性)だけでしのげるのはこの年代まで。なでしこ入りを果たし、世界トップと肩を並べるためには判断力と展開力のレベルアップが必要不可欠。ヤングなでしこの選手たちは今後世代別カテゴリーがなくなり、なでしこジャパン経験者がライバルとなるため、実際には2、3人がなでしこに絡めれば上出来かもしれない。ここから2年半でどこまで成長できるかが、世代交代のカギとなる。

 今シーズン最後の世界大会となったのがU-17女子W杯アゼルバイジャン大会だ。日本はベスト8という結果に終わったが、"チームの質"でいえば優勝候補であり、力は十分に備わっていた。この大会は近未来の縮図のようだった。優勝したフランスのカラーはトップチームに沿ったもので、超攻撃的なサッカーは緩急を織り込んだしなやかさを含んでいた。そして決勝でPKの末に敗れた北朝鮮は、セオリー通りでありながら力強い。

 日本の特長はその攻撃力。多彩で見る者を引き込む魅力を持っていた。ベスト8ながらブロンズボール(優秀選手)に選出された長谷川唯はスピード感と決定力を誇る。鋭いドリブルで切り込む成宮唯や、バイタルエリアで絶対的な強さを発揮する増矢理花といったタレントも豊富だ。初めての世界大会でうまく力を発揮できないジレンマを経験したからこそ、これからの成長が楽しみだ。

 アフリカ勢としては唯一の決勝トーナメント進出国であり、初のベスト4入りを果たして3位になったガーナも面白い。日本もこのガーナにやられてベスト8で涙したのである。アフリカ勢らしくフィジカルは大会随一。しかし、ガーナの強さは徹底した組織力を発揮した守備にあった。そしてひとりでも打開してゴールをこじ開ける個の攻撃力もある。

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