【なでしこジャパン】 アルガルベ杯で見えた弱点。五輪メダル獲得へのポイントは? (2ページ目)
シーズンの真っ最中であるドイツに対して、国内組はオフ明けのコンディションである日本勢。身体のキレはイマイチでも、連携不足が否めなくても、「負けていい試合なんてない」と語ったキャプテンの宮間あやを中心に「どんな不利な条件があろうとも、何が何でもピッチではまとめあげる」という意気込みは十分に伝わってきた。
1点目の川澄奈穂美のゴールは安藤梢が自身の突破でDFを引き付け、川澄へつないでスペースを作ったところから生まれた。田中明日菜の2点目もショートコーナーから宮間と川澄を介し、永里優季が流し込んで最後に田中と早いパス展開で一瞬の隙をついたもの。永里の終了間際のゴールは相手GKのミスもあったが、それを見逃さず、落ち着いて沈めた。この3点目は、有吉佐織がファウルで相手にPKを与え、勝ち越しされた直後に取り返すというタイミング。
だからこそ、3度目の同点劇直後の失点は痛かった。DFラインとGKとの連携で防げるものだっただけに、その曖昧さによって生じた失点は見逃せない。中途半端なプレイはこのレベルの相手には、命取りになるということが改めて証明された。
ポルトガルでは「パスの精度とスピードの向上」に佐々木監督はこだわった。そして選手間で攻撃のテンポに変化をつけようと編み出したポジションチェンジも、戻りのポジショニングさえズレなければ佐々木監督は推奨している。
しかし、これは想定していたイメージほど効果的とはいかなかった。日本が目指すスピードに乗ったパスとポゼッションは"その辺り"という質では話にならない。"なでしこ"を研究してきている強豪国のイメージの上をいく質まで持っていかなければ、ロンドンでの戦いは厳しいものになるだろう。
ボランチの阪口夢穂も「これまでは守備の意識を高くしていたので、(体調不良での澤穂希の不在で)いざ自分が攻撃的な位置に入るとまだ迷いがある。パスの質にこだわり過ぎるとミスが出る......ここからまだまだ引き上げていかないとダメ」と"準優勝"という結果ではなく、自身の不足していた内容に対して厳しい表情を崩さなかった。
昨年のW杯では主力"11人"+計算できる"3人"が主力となって戦った。しかし、さらに総力戦となるオリンピックを視野に入れた場合、もちろんこの人数では少なすぎる。だからこそ佐々木監督はそれぞれに複数のポジションをこなせる力と役割を求め続け、チームのバリエーションを増やすことを最優先に行なってきた。
いわば"最良の相手との連戦テストマッチ"と化したアルガルベカップは、チーム全体の底上げとしては、実りある大会になった。しかし主力級の"積み上げ"という面でいえば、足踏み状態から抜け出せていないことも現実としてある。主力選手全員のレベル向上は進化のための必須条件だ。
ロンドン五輪本番までに計算できる主力級の選手がどれだけ伸びて、チーム全体の総合力を引き上げられるか。メダル獲得への一番のポイントになるだろう。
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