検索

身長175センチ、球速140キロ台でも打たれない 西武・山田陽翔が明かす「打者を翻弄する独自投球術の全貌」 (4ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 その後は同じ轍を踏まず、再び鉄壁のリリーフを続けている。経験をすぐ財産に変えられるのは、非凡な才能のひとつと言えるだろう。

 プロ入り3年目、表情にまだあどけなさの残る21歳。今後はどこを見据えているのか。将来的には先発を務めたいのか、中継ぎが向いているのだろうか。

「どうなんですかね。投げろと言われたところで投げることが仕事なんで、特にないですね。求められたところでやりたいです」

 職人気質で、首脳陣に求められる職場で力を発揮したいという考え方だ。一方で、ボールの精度は「まだまだ磨いていきたい」と語る。

「まずはストレートをしっかり150キロ出せるようにしたいです。球種については、どの球でも意図して投げられるようにしていきたい。そして、調子の波に左右されずに力を発揮できるように、感覚的な部分も自分でしっかり理解しながら取り組んでいきたいですね」

 投げたい変化球を聞くと、目を輝かせた。

「チェンジアップを投げてみたいのと、あともう1個。自分はシンカー系の球種にツーシームがあるので、スプリットであったり、曲がりの大きいスイーパーも投げてみたいですね。でも縦投げなので、どうしてもジャイロになってしまうんですけど。でも、まだまだあります(笑)」

 山田の特徴は、アームアングルの高さだ。自分の身体を最大限に使おうと、オーバースローを磨き上げてきた。

「身長が低いぶん、大きく投げようと思ってきました。リリース(の位置)は185センチくらいあるので、けっこう高いと思うんですよね」

 この投げ方がフォークの落差を生み、ストレートやツーシーム、シュート、カーブも生かしている。そうした現在の特徴を踏まえたうえで、今後どんなアップデートを遂げていくのだろうか。

 優れた感性と旺盛な好奇心をあわせ持ち、モダンな発想を取り入れながら、自らの武器を磨き続けている。その覚醒にスイッチが入ったのは、今季の開幕を控えた自主トレ期間だった。それ以降、彼は瞬く間に成功の階段を駆け上がり、いまやNPB全体のリリーバーのなかでも傑出した安定感を発揮している。

 高卒で入団して3年目。甲子園のスターは、プロの世界でシンデレラストーリーを描き始めたばかりだ。


山田陽翔(やまだ・はると)/2004年5月9日生まれ、滋賀県出身。近江高校では投打でチームを牽引し、甲子園に3度出場。2年夏ベスト4、3年春の選抜で準優勝、夏はベスト4に進出するなど、歴代5位の甲子園通算11勝を挙げた。22年のドラフトで西武から5位指名を受けて入団。1年目、2年目はファームで過ごしたが、3年目の25年シーズン、初の一軍登板を果たすと、その後もリリーフとして活躍。

著者プロフィール

フォトギャラリーを見る

4 / 4

キーワード

このページのトップに戻る