検索

プロ野球はなぜ「打てない時代」に突入したのか 「160キロよりもキツい」「真っスラホップ」の正体 (3ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

「ポランコがメジャーに昇格した時(2014年)、ピッチャーはツーシームばかりで、ある時期からみんなその低めのボールを上げるような打ち方をしていたそうです。ポランコもその打ち方で結果を出したわけですが、なぜ打てなくなったかというと、『高めのフォーシームが流行り出したからだ』と。2020年頃ですね。『それでだいぶ苦労した』と言っていました」

 ボールを上げるような打ち方とは、いわゆる"フライボール革命"だった。その発端は2015年、野球のあらゆるプレーをデータで可視化するシステム(=スタットキャスト)がMLBで導入されたこと。結果、最も本塁打や長打になりやすい打球速度(約158キロ)、打球角度(26度〜30度)が判明する。その組み合わせは"バレルゾーン"と定義された。

 バレルゾーンの打球角度で打つためには、ゴロではなくフライを打つ必要がある──。この考え方をいち早く取り入れたヒューストン・アストロズが2017年にワールドシリーズを制覇したことで、メジャー全体に広まる。すなわちフライボール革命が起こり、19年のMLB本塁打数は過去最多の6776本に達した。すると投手側も対策し、「高めのフォーシーム」を多投するようになったとされる。

「ピッチャーとすれば、低めは全部拾われてしまうので、高めに速球を投げる。これが日本にも入り始めたのが、コロナ禍の時ぐらいだったと思います。低めで小さく変化するボールが主流だったところにチェンジアップが入ってきて、さらに高めの速い球。要は高低で攻められる。バッターにとっては、どう対応するか、難しい時代に入っていきましたよね」

 コロナ禍、2020年のプロ野球。開幕が約3カ月遅れ、当初は無観客という異様な環境下でゲームが行なわれ、年間120試合に短縮された。その頃に「高めの速い球」が"輸入"され、"投高打低"につながった可能性ありというのが行木の見方だ。

3 / 4

キーワード

このページのトップに戻る