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ベイスターズ「史上最大の下剋上」の舞台裏を戸柱恭孝が語る ジャクソン、ケイはこうして覚醒した (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi

── 努力が報われましたね。

戸柱 人間ですので気持ちの浮き沈みはあるし、正直、心が折れそうな時期も少なからずありました。でも、いい結果が出た時には「やるべきことをやってきてよかった」と、あらためて思いました。どんな時でも準備するという大切さを、周りにも証明できたのではないかと。プロは結果を出さないと評価されない部分はありますし、ただでさえ捕手はなかなかスポットが当たらないポジションですから。

── 阪神とのCS第2戦で5打点。シーズンでの打点を1試合で上回りました。あれで気持ち的に乗れましたか。

戸柱 毎日、早出特打をしていたので、見てくれていたコーチには「たまたまではなく、打つべくして打ったんだよな」と声をかけてもらいました。

【捕手としての引き出しが増えた】

── もともと勝負強い打撃には定評がありますが、リード面はどうでしたか。

戸柱 今年は山本捕手が骨折した9月中旬以降、試合に出させてもらいました。僕はプロ入り1、2年目に開幕スタメンから100試合以上に出ていたのですが、当時とは違った手応え、駆け引きをつかみました。捕手としての引き出しがもう1個、2個と増えた感覚です。それが、その後の短期決戦にも生きました。

── 「捕手としての引き出し」とは具体的にどんなところでしょうか? 

戸柱 12種類のカウント別に打者がスイングしている球種、ヒットになった球種、ファウルしている球種は頭に入れてあります。それとは別に相川亮二ディフェンス兼バッテリーコーチと相談しながらやっていました。配球を組み立てるなかで、これまでは「打者優先(弱点を攻める)」オンリーでした。

── それがバージョンアップしたということですね。

戸柱 シーズン途中、(アンドレ・)ジャクソンをリードしていて「投手優先(長所を引き出す)」が加わりました。さらに「打者心理」を考えるようにしたら、ストレートが通る(打者が見逃す)ようになりました。それが試合において1打席目、2打席目、3打席目とつながるようになったのです。プロ9年間、なかなか埋まらなかったパズルのなかで、見つからなかったピースがカチッとはまったような感覚でした。そこに「投手心理」を加えられたらいいなと思っています。

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