【日本シリーズ2024】1998年マシンガン打線より「迫力は上」と石井琢朗コーチ 「なんでこのチームが3位なの?」DeNAが驚きの覚醒 (2ページ目)

  • 村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu

【後ろへつなげ、後ろへつなげ】

 チャンスが実を結んだのは3回だ。2死1、2塁から筒香嘉智がセンター前へのタイムリーヒットで3戦連続の先取点。大きく吠えて気合いを見せた筒香は2017年の日本シリーズ経験者として試合前にこんな話をしたという。

「(第3、4戦を勝利したことで)今日はソフトバンクさんも、今まで以上に勝ちにくる。僕たちも『相手の1個上、2個上の思いを持っていないと勝てない』とミーティングをして、それが今の雰囲気というか、全員で勝つために、ひとつのボールを最後まで追いかけることができていると思います」

 この3回は筒香に続いて戸柱恭孝もヒットで2死満塁とチャンスを広げたが1点止まり。それでもアンデッドなチャンスメイクは次の4回も桑原将志、梶原昂希がボテボテの内野安打でチャンスを作ると、前日まで打率1割台前半と苦戦していたキャプテン牧秀悟がレフトスタンドへシリーズ第1号のスリーランを放ち、完全に主導権を握った。

「調子は決していいとは言えないですけど、一本出てチームに貢献できてよかったです」と試合後に答えた牧は、「みんな勢いというか、初回から最後まで自分たちの野球で攻め続けられています」と、この勢いの要因を語る。

 潰されても潰されても、マシンガンのように繰り出されていくチャンスの連鎖。26年前の日本シリーズで.480と打ちに打ちまくりシリーズMVPを獲った鈴木尚典打撃コーチは、この打線の勢いに目を細める。

「みんなここに来て、究極とも言えるような集中力を発揮してくれていますよね。とにかく全員が後ろへつなげ、後ろへつなげという意識を強く持っているのが大きいです。もちろん、ヒットが出ていることもですが、この3連戦で合計18個の四死球を取れてるでしょ。そうやって、自分が打てなくても何とかして次の人へとつないでいることが形になってきていますよね」

 ダメな時はごめんなさい。それでも勢いに乗った時には"もののけがついている"と喩えられるほど、手がつけられない結束力を見せるのが、ベイスターズの伝統芸。ペナントレースでセ・リーグ3位のチームがここまでチャンピオンチームと互角以上に渡り合えているのも、投手陣の驚異的な踏ん張りと、この打線の勢いが重なったゆえである。

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