西武・岡田雅利は生涯一捕手で現役引退 「生まれ変わってもやりたい」キャッチャーの面白さを語る (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 野球で捕手は最も競争の激しいポジションだ。岡田は出場機会に恵まれるたび、「なんとか爪痕を残そう」と意気込んだ。

 マウンド上の投手に自分の意図を伝えるため、ミットを構えて小さくなり、「低めに来い」と大袈裟なジェスチャーを見せる。打者に気づかれるかもしれないが、それより投手を引っ張ることを優先した。

 リードではインコースをあえて多く使うなど、炭谷と違う配球を心がけた。さらにイニングの合間や試合後、とくに若手投手とは積極的にコミュニケーションを図った。

「若いピッチャーは、(深い考えを持たず)ただ単に投げていることも多い。試合前に『インコースでいきたい』と言っていたのに、インコースのサインを出したら首を振るとか。試合後、『あそこはインコースにいけたんじゃないか』と話し、次に生かしてもらうようにします。ゴマするわけじゃないですけど、『キャッチャー、誰がいい?』と聞かれたピッチャーが『こう言ってくれたから岡田さん』となってもらえたらいいし。キャッチャーとしてピッチャーを伸ばせる部分って、そういうところしかないと思うので」

【今井達也のプロ初勝利を演出】

 節々での会話に加え、配球でもメッセージを伝えた。それが奏功したのが2018年6月13日、今井を初勝利に導いたヤクルト戦だった。

「今井は初先発、自分も交流戦だからデータもあまりないので、『とりあえずいいところを出していこう』と一番にピッチャーのことを考えました。ピンチになれば、いつもと"違うところ"を出していく。今井で言えば真っすぐ、スライダーがキーになるなか、ここぞというときに第三のボールであるチェンジアップを大事にしています。バッターは真っすぐ、スライダーの二択と考えているところで、違うボールをどんどん振ってくれました」

 今井は高校時代から150キロを超えるストレートと鋭く曲がるスライダーを武器にしている。そんななかで岡田はチェンジアップをうまく使い、投球の幅を広げようとした。

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