江川卓と桑田真澄──角盈男が一時代を築いた巨人のエースを比較 「ふたりに共通していたのは...」 (2ページ目)
「あのホリさん(堀内恒夫)だって、江川さんのことをすごいピッチャーだと認めていたはずです。でも、プライドがあるので絶対に本音は言わないだろうし、自分より上か下なんて口が裂けても言わないと思います」
プロの選手から見ても、規格外のポテンシャルを持つ江川を目の当たりにして、同僚たちはその実力を認めざるを得なかった。
【江川卓と桑田真澄の共通点】
角の話で興味深かったのは、江川と桑田真澄との比較である。
「江川さんもそうですけど、甲子園で優勝を義務づけられ、成績を残したピッチャーっていうのは、バッターとの駆け引きがうまい。江川さんなんかも、ランナーが二塁に進んでから全力投球。桑田もそんな感じでした」
桑田はPL学園時代、1年夏から実質エースとして5季連続甲子園出場を果たし、優勝2回、準優勝2回、ベスト1回と驚愕の成績を残した。
「一度、桑田にこう言われたことがあるんです。バッターとして対戦していて、アウトローでストライクを取ると『角さん、なんで初球から一生懸命やるんですか? バッターの打ち気がないとわかれば、力を抜いてポンと投げればいいじゃないですか』と。僕は1本のヒットも打たれたくないなかでやっていたから、そういう思考がないわけです。でも桑田は、平気でそういうことを言う。とにかく、並外れた洞察力があったんだろうね」
江川にしても、高校時代から相手打者の力を見極めて投げていた。チームのなかで一番センスのいい選手がトップバッターに座るという持論から10段階で評価し、それをベースにしながら2番以降も分析しながら投げていた。
そうでもしないと、高校時代の過酷な遠征、大学時代のリーグ戦と、まともに投げていたら簡単に肩はぶっ壊れていただろう。おそらく、高校時代の桑田も同じ経験をしたのだろう。
そして角は、桑田についてこんなエピソードも教えてくれた。
「もうひとつ頭にきたのは、オレがコーチだった1997年、あいつが投げていて、途中でフォームを変えるんです。『桑田、変えたね』って言うと、『わかります』みたいな返事をする。要するに、自分がこのピッチングコーチを信頼できるかどうか試していたんです。1年夏から名門・PLのマウンドを託され、優勝を義務づけられていたわけですよ。あの体でやるっていうのは、やっぱりそのぐらいの気概ないと......自分で自分を守っていかなきゃいけないからね」
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