「千賀滉大獲得秘話」と「伸びしろの正体」を、根本陸夫を師と仰ぐ小川一夫が明かす (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Sankei Visual

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 2011年2月の春季キャンプ。小川は二軍と三軍の選手一人ひとりをきちんと見て、寝食をともにした。そのなかには「一芸に秀でていれば育てがいがあるんじゃないのか」と、自らの責任で獲った三軍一期生(10年育成ドラフト指名選手)の新人もいた。1カ月が経ってキャンプを打ち上げた時、はっきりとわかるものが小川にはあった。

「よく、選手の"伸びしろ"って言いますよね。それは結局、頭脳だったり、性格だったり、野球に対する取り組み方だったり、その子の内面的な部分で決まってくるんだとわかったんです。足が速いとか、肩が強いとか、関節がどうとかいうのは、プロのスカウトなら見ればわかるわけです。でも、いちばん大事な"伸びしろ"って、一見してわかりづらいものなんだなと」

"伸びしろ"を理解したことは、二軍の若手を育成するうえでも奏功した。三軍一期生のうち、千賀滉大(投手/蒲郡高)、牧原大成(内野手/城北高)、甲斐拓也(捕手/楊志館高)が一軍で大きく開花したのも、そのことが少なからず関係していたはずだ。

獲得リストになかった千賀滉大

 二軍は勝つことが第一ではないが、小川は監督就任2年目の2012年から2年続けてウエスタン・リーグ優勝という結果を残す。13年にはファーム日本選手権でもチームを優勝に導くと、オフにはフロントに戻り、編成育成部長に就任した。

「その時はある意味、確信を持って、『伸びしろってこういうものだよ』ってスカウトたちに伝えました。内面はわかりづらいものなんだから、いかに調査力が大事か、ということをね」

 調査力とは、グラウンドで目に見えるもの以外、すべてを調べあげる能力と言っても過言ではない。その選手を調べあげる途上では人脈を駆使することもあるわけだが、逆に、人脈のなかから別の選手の情報がもたらされる時もある。小川にとっては、三軍一期生のひとり、千賀の情報ほど貴重なものはなかったようだ。

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