清原和博の打撃は「1年目が一番よかった」。石毛宏典から見た新人時代と肉体改造後の違い (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Sankei Visual

「なんでそんなに体を大きくしたんだ?」

――清原さんは"無冠の帝王"と呼ばれていたこともありますが、サヨナラ安打(20本)、サヨナラ本塁打(12本)、オールスター戦通算打点(36点)、オールスター戦MVP(7回)の歴代最多記録保持者であり、通算被死球(196個)、通算三振数(1955個)も歴代最多。これらの数字に清原さんのスター性、ドラマ性を感じます。

石毛 あれだけの逸材だから、当然オールスターにも選ばれるし、そういったお祭りの舞台で活躍して目立つイメージはあります。三振は多いですが、西武にいた時はそんなに多いとは思わなかったんですけどね。

 肉体改造を始めて、筋線維を太くして体が大きくなってから、三振が増えて脆さが出てきた印象があります。死球が多いことについては、逃げるのが下手でしたからね。逃げるのが下手だったから三振が多かったのか、積極的に振りにいったから死球が増えたのかはわかりませんが。

――肉体改造を始めた時期に清原さんと話す機会はありましたか?

石毛 清原が巨人に移籍して1年目か2年目だったと思います。現役を引退していた自分は、評論家としてグラウンドに行った時、「なんでそんなに体を大きくしたんだ?」と清原に聞いたんです。すると、「子どもたちに150m級のデカいホームランを見せてあげたいんです。スゲーって憧れる存在になりたいんです」と話していました。

 アメリカンフットボールの選手は、体重100kgを超えていても100mを10秒台で走るとか、「単に体が太いだけじゃないんですよ」と、パワーとスピードを兼ね備えた体についても話してましたね。自分は「100mでも150mでも、ホームランはホームランじゃないかな」と思っていましたけど。

――肉体改造によって得たバッティングと新人時代のバッティングの違いは?

石毛 新人時代を例えるなら「柔」。体にキレがあって、シュッとやわらかいスイングができていました。一方、肉体改造に励んでいた巨人時代は「剛」。ガーンと打つだけのように見えましたね。

 体を大きくすると、大きいスイングでホームランを打とうとしがちなんですが、実際はスイングを大きくするとバットの芯に当たる確率が下がるので、自分は賛成できなかったんです。徹底して体を鍛えると、変に自信がついてボールから逃げないので死球も多くなりますし、打ち急いで体の開きが早くなったりすることもありますから。

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