巨人・中田翔を筆頭にジェットコースターのような山あり谷あり。2007年高校生ドラフト1位の数奇な野球人生 (4ページ目)

  • 津金壱郎●文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Kyodo News

ドラ1が11人しかいない理由

 その中日が2007年高校生ドラフトで由規を外し、岩嵜を外して、3度目で獲得したのが赤坂和幸。浦和学院高時代は58本塁打のスラッガーとして名を馳せたが、プロでは投手を希望して入団。1年目の6月には首脳陣の粋な計らいもあって、地元・埼玉での西武ライオンズとの交流戦でプロ入り初登板する。

 しかし、その後は黄金期の中日にあって一軍での登板機会を手にできず、2011年から外野手に転向。2014年に育成契約から支配下登録に復帰すると、2015年は代打や左キラーとして一軍で存在感を発揮した。2017年かぎりで現役を引退し、現在は中日で広報を担当。SNSなどに選手とともに登場することも。

 あと、2007年高校生ドラフトの現役組には広島の安部友裕(福岡工大城東)とDeNAの田中健二朗(常葉菊川)がいるが、今季はふたりとも土俵際のシーズンになっている。

 安部は2017年には打率.310をマークするなど、走攻守で広島のリーグ3連覇を支えたが、近年は世代交代の波と戦っている。2020年は26試合の出場に終わり、昨年は85試合出場と盛り返したものの、今季いまだ一軍登録はない。

 田中は常葉菊川高3年時にセンバツで優勝投手になり、夏の甲子園でも野村祐輔(広島)、小林誠司(巨人)、上本崇(広島)を擁した広陵高に敗れたものの、ベスト4まで導いた実力が評価されてプロ入り。ドラフトは由規と高濱を逃した"外れの外れ1位"だが、それでも両選手より長いプロ生活になっている。

 ただ、その大半は故障との戦い。2015年にセットアッパーとして台頭し、オールスターゲームにも初選出されたが、2018年は大不振。阪神の藤浪晋太郎に満塁本塁打を浴び、2019年にトミージョン手術を受けた。昨季終盤に3年ぶりに一軍登板を果たし、今季は開幕から一軍に名を連ねている。

 ちなみに、この2007年高校生ドラフト1位が11人しかいないのは、西武が「栄養費問題」の制裁によって、高校生を対象とするドラフト2選手の指名ができなかったためだ。それにしても2007年高校生ドラフト1巡目の運命が数奇なのは、この時から始まっていたのかもしれない。

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