元審判員が選ぶ「印象に残る名捕手5人」。キャッチングNo. 1や球界一の強肩、仏と評された選手は? (2ページ目)
球史に残る強肩捕手は?
達川光男(元広島)
達川捕手といえば、『珍プレー、好プレー』というテレビ番組の常連で、とにかく言動が面白いことで有名でした。そんな達川捕手とは縁があり、私がNPBの審判員としてデビューした1992年は、彼の現役最終年でした。
じつは、私のプロ審判のデビュー戦は、広島の春季キャンプの紅白戦で、達川捕手もマスクを被っていました。
「実家がお寺の坊さんか。オレは審判に恥をかかす真似はせんけぇ、任せておけ、頑張れよ」と励まされたのですが、紅白戦とはいえ、こっちは緊張して、緊張して......記念すべき最初の球はド真ん中のストライク。それをあろうことか、「ボール!」とコールしてしまった。
「審判の先輩方、この坊さん、審判じゃメシ食っていけんぞ!」と、絶妙な広島弁の突っ込み。選手もほかの審判も、みんな腹を抱えて大笑い。恥はかきましたが、さすが全国区の人気選手だと、あらためて感心させられました(笑)。
強肩捕手として名を馳せた現オリックス監督の中嶋聡この記事に関連する写真を見る中嶋聡(元オリックス、西武など)
昨年、セ・リーグの盗塁王は30個の中野拓夢(阪神)で、パ・リーグは24個で荻野貴司、和田康士朗(ともにロッテ)、西川遥輝(日本ハム/現・楽天)、源田壮亮(西武)の4人が分け合いました。
盗塁数が減ったのは、投手のクイックが全体的に浸透していることと、作戦としてヒッティングが増えたことが挙げられます。
かつては、名捕手と言われた選手たちと快足ランナーとの真剣勝負は見応えがありました。赤星憲広選手が5年連続盗塁王に輝いた2000年代はじめは、古田敦也捕手(ヤクルト)を筆頭に、谷繁元信捕手(横浜→中日)、阿部慎之助捕手(巨人)など、好捕手が揃っていました。
パ・リーグでも、メジャーでプレーした城島健司捕手(ダイエー、ソフトバンク→マリナーズ→阪神)や5年連続ゴールデングラブ賞に輝く甲斐拓也捕手(ソフトバンク)など、多くの名捕手が出ています。
ランナーを刺すには、肩の強さ、捕球してからの早さ、コントロールが重要になりますが、地肩の強さという点では、現在オリックスの監督を務める中嶋聡捕手以上の人はいないでしょう。
最も印象に残っているのは、1995年のオリックスとヤクルトとの日本シリーズ。低い弾道でそのまま二塁に到達したのを見た時は、度肝を抜かれました。あとにも先にも、あれほどの送球を見たことがありません。中嶋捕手は、間違いなく球史に残る「強肩捕手」だと思います。
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