「勝利を求めればいい、という考え方は時代遅れ」。ソフトバンクGMが語る野球競技人口減少への対策やNPBの未来 (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

【SDGsが求められる時代】

「ホークスのベースボールオペレーションのなかで、ジュニア世代の育成にどういうチャレンジができるか。言ってみれば、三軍の拡大です。18歳から上のプロ組織の拡大とともに、サッカーやほかのスポーツが取り組んでいるユース世代の拡大にどんなアプローチができるかを、今後のテーマとしています」

 NPB球団がJリーグクラブのように下部組織を持つという発想は長らく語られてきたが、具体化には至っていない。球界には「プロアマの壁」がそびえ、「学生野球とハレーションが起きかねない」と二の足が踏まれるからだ。

 一方、野球界はそのあり方を根底から揺らがせる問題に直面している。10年ほど前から急激に進む、野球競技人口減少だ。小中学生の野球人口は、この10年で3分の2以下に減少した。

 このまま野球をする子が減り続ければ、プロ野球の人気も落ちていき、ひいてはNPBのレベルが下がり、そこを目指す子どもが少なくなっていく。恐ろしい負のサイクルが想定されるなか、プロもアマも有効な対策を打てていないのが実情だ。

 暗い未来を防ぐべく、もっとプロ野球としてできるアプローチがあるのではないか。三笠GMはそう考えている。

「野球人口を拡大するために、ある程度の事業規模を持っているプロ野球が打って出ることは必要だと思っています。お金ばかり使う慈善事業のような形ではなく、中長期の事業計画に対してやったほうがいい。

 今の時代はSDGsが求められ、企業のブランド価値や株価にも影響してきます。企業の営利やトップチームの勝利を求めればいい、という考え方は時代遅れで、社会と我々の超長期的な成長にも役立つシナリオをしっかり考えて取り組むことがとても大事です」

 そうした意味では昨年、熊本と大分の2球団で発足したヤマエ久野九州アジアリーグは球界に新たな可能性を感じさせられるものだった。事前にソフトバンクとの交流戦など協力を得られたことが、リーグ誕生への後押しになったと田中敏弘代表理事は明かしている。今季は北九州を加えて3球団に拡大される一方、ソフトバンクには三軍の試合機会創出というメリットがある。

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