「勝利を求めればいい、という考え方は時代遅れ」。ソフトバンクGMが語る野球競技人口減少への対策やNPBの未来 (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

【女性スタッフも積極的に採用】

 前述した萩原スカウトやGM補佐兼データ分析担当ディレクターの関本塁氏は、業界で特に知られる存在だ。29歳の牧田恭平氏はアメリカの大学球界でプレー経験があり、今年2月にスカウティングコーディネーターとして入団した。

 次々とグラウンド外でも優秀な人材を見つけ出し、適材適所に配置していることも常勝軍団づくりの礎(いしずえ)にある。

「三軍制など組織を拡大するにあたり、選手だけでなくフロントオフィスやスタッフのダイバーシティも留意しています。今までプロ野球のなかでフロントマンとして頑張ってきた人も含め、新しいものをつくっていくような組織が一番強い。今年は女性スタッフも積極的に採用したいと考えています。こうした組織づくりは、メジャーリーグの球団はみんなやっていることです」

 そう語る三笠GM自身、球界では異色のアイデンティティを持っている。NPB球団では元選手がGMを務めるケースが多いが、三笠GMはラグビー出身だ。

 新日鉄釜石ラグビー部が1978年から7連覇時の部長を父親に持ち、自身は東京大学ラグビー部でプレー、監督を2年間務めた。卒業後は日本テレコムに就職し、買収されたソフトバンクに転籍する。2008年から球団業務に携わり、2019年GMに抜擢された。

「ラグビーで日本一にずっとなっているチームの雰囲気を幼い頃に肌で感じてきたことは、自分のなかでとても大きいです。ソフトバンクではビジネスパーソンとしてオーナーの孫正義、社長の後藤芳光、先代社長の笠井和彦さんなどに教えていただき、すごく身になっています。大きく言うと、そのふたつを組み合わせて今の自分がいます」

 ソフトバンクが買収した2004年から、ホークスは「めざせ世界一」を球団スローガンに掲げてきた。2011年に始めた三軍制はそこを見据えた取り組みのひとつで、確かな成果が出た今、先を見据えて動き始めている。昨年12月、スポーツ振興部野球振興課を野球振興部に昇格させたのは、その一環だ。

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