社会人時代の恩師が語るラオウ覚醒秘話「背が高くて、スタイルもよくて、モデルみたいだった」

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

 先日、あるドラフト候補の取材で近畿大工学部に行った時のこと、花本輝雄監督と「ラオウ」の話題で盛り上がってしまった。

"6年目の覚醒"などと報じられ、昨季パ・リーグを制したオリックスの不動の4番となり、
本塁打王にも輝いた「ラオウ」こと杉本裕太郎。その杉本を社会人時代(JR西日本)に2年間指導したのが花本監督だった。

2021年シーズン、パ・リーグの本塁打王に輝いたオリックス・杉本裕太郎2021年シーズン、パ・リーグの本塁打王に輝いたオリックス・杉本裕太郎この記事に関連する写真を見る「いやぁ、ビックリしましたね。すごいことですよね」

 言葉とは裏腹に高揚感がないのは、花本監督の控えめな人柄のせいだろう。

「今はすごい体になっていますけど、うち(JR西日本)に入社した頃はスラッと背が高くて、スタイルもよくてね......モデルか、バレーボールのアタッカーみたいでしたよ」

【センターの守備も一級品だった】

 徳島商のエースとして、190センチ近い長身から投げ下ろす剛腕として注目されていた高校時代の杉本は知らないが、青山学院大に進んで自らバットマンに転じてからのプレーは神宮球場で何度も見ていた。

 たしか2年から試合に出ていて、2学年下の吉田正尚(オリックス)とクリーンアップを組んで、神宮球場のライトとレフトに連続アーチを放っていたが、まさかその数年後に、今度はプロの世界でアベックアーチを放つとは......誰もが想像しなかったことだろう。

 花本監督にとって杉本の第一印象は、バッティングよりも守備だったという。

「センターを守っていて、打球を追っていく姿はほんとカッコよかったですね。バランスがよくて、足も速くて、肩も一級品。身体能力の高さは、チームのなかでも飛び抜けていました」

 杉本のセンターの守備については、私も強烈な印象がある。

 社会人2年目の5月の九州大会。北九州市民球場で行なわれた試合で、杉本は「4番・センター」で出場していた。

 定位置の真後ろを襲った大飛球に、いったん目を切ってから全力で背走すると、振り返ってすぐに打球を見つけて捕球。これだけでも簡単ではないのに、そこからノーステップスローでカットに入った内野手にストライク送球し、走者のタッチアップを阻止してみせた。

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