「今さら言いなりになるのもダセえなって」。愛と雑草魂と直球を武器に日本ハム・吉田輝星が4年目に挑む

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

Sportiva注目アスリート「2022年の顔」
第2回:吉田輝星(プロ野球)

(第1回:中井卓大(サッカー)スペインでの現状と課題>>)

スポルティーバが今年とくに注目するアスリートたち。その才能でどんな輝かしい活躍を見せてくれるのか。「2022年の顔」と題して紹介する。

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 彼は"ヤンキー漫画"をこよなく愛している。

「めっちゃ好きなんスよ。漫画っつったらヤンキー漫画しか読まないス。ビーバップ(『BE-BOP-HIGHSCHOOL』/きうちかずひろ)も読んだし、『ろくでなしBLUES』(森田まさのり)、湘爆(『湘南爆走族』/吉田聡)はもちろん、最近では『クローズ』(高橋ヒロシ)とかも読みました。ヤンキー漫画に出てくる総長とかリーダーとか、人の上に立つ人ってピッチャー陣のエースみたいな感じじゃないスか。どんだけ若くても信頼されている人って、総長の雰囲気が出てるんスよね。上沢(直之)さんも宮さん(宮西尚生)も後輩だから自分らを下に見るって感じとかないし、背中で引っ張る感じがあって憧れますね」

 金足農業高校出身。

 農業高校の実習では実習着を汚すのが、野球部の練習ではユニフォームを汚すのが、彼の得意技だった。だから「泥臭くやるのが農業高校生のプライドです」と話していた吉田輝星は2022年、プロ4年目を迎える。

入団1年目以来の勝ち星を目指す日本ハム・吉田輝星入団1年目以来の勝ち星を目指す日本ハム・吉田輝星この記事に関連する写真を見る つまりは、あの夏から4年が経つということだ。

 2018年の夏、金足農は秋田県大会の決勝で明桜を2-0で破り、11年ぶり6度目の甲子園出場を決めた。最速150キロを投げるエースの吉田がその歓喜の輪のど真ん中にいる。吉田は秋田大会の5試合を一人で投げ抜いた。その球数は636、奪った三振は57。決勝で投げた最後の一球は左バッターのアウトハイへ、唸りをあげて伸びていくストレートだった。空振りの三振を奪って甲子園を決めた瞬間の吉田は、振り向きざまに両の拳を突き上げ、雄叫びを上げた。甲子園に"カナノウ旋風"が巻き起こる前の光景である。

「帰りのバスはお祭り騒ぎです。窓を開けて、周りに響き渡るような爆音でヒップホップ系の音楽をかけて、みんなで騒いでいました」

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