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ダルビッシュが絶賛も突如、野球界から消えた強打者。妻に背中を押され再びNPB挑戦へ【2021年人気記事】 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 回復途上の右手首には痛みが残っていた。バットにボールが当たるインパクトの瞬間、恐怖から右手首をかばう打ち方になっていた。さらに体重が86キロに増え、動きのキレまで失われていた。

 結局、27試合に出場して打率.147、0本塁打という無残な数字が残り、ドラフト会議前にNPB球団からの調査書は届かなかった。

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 今季は心機一転、滋賀に移籍。開幕前のオープン戦ではおもに7番で起用されているが、決して首脳陣からの評価が低いわけではない。柳川洋平監督は言う。

「植田の魅力は体が小さくても強く振れるところにあって、ちょこまかと打っても魅力はありません。去年は結果が出ず、スイングがおとなしくなっていた。今年は強く振るなかで確実性を高めたほうがいいと本人とも話して、下位打順に置いています」

 植田に右手首の状態を聞くと、「90パーセントくらいまでよくなっています」と力強く答えた。インタビュー後の打撃練習では、しなやかにヘッドを使い外野後方まで伸びる打球が見られた。植田ならではのインパクトの爆発力はまだ物足りないものの、着実に復活へと近づいている。

 高校時代の経験が今の自分にどのように生きているかを尋ねると、植田は意外にも「僕は忘れたいんです」と答えた。

「高校時代の僕のイメージが強いと思うんですけど、もう終わったことなので。僕はここで新しい野球スタイルをつくっていきたい。それは嫁ともよく話すんです。嫁は気が強いので『過去の栄光にしがみつくな』と言われますよ」

 そう言って、植田は人懐っこい笑顔を見せた。今季の目標は打率3~4割、本塁打10本以上、盗塁5~10個だという。

 ちなみに、昼食をとらない理由は「減量」のためだという。昨年よりも現時点で10キロも絞り、さらにベスト体重である72キロへと近づけるため摂生しているそうだ。

「去年と比べて気持ちを入れ替えて、『今年はやるんだ』という思いがあります。嫁とは『ダメなら最後』という話もしています。今年でなんとかNPBに行くつもりです」

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