広島ドラフト4位・田村俊介のスイングは若き日の掛布雅之のよう。二軍より一軍で育成してほしいワケ

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Sankei Visual

 11月下旬に開催された「都市対抗」は、毎日のように観戦した。社会人野球の最高峰の大会だけあって、選手たちは1年かけて磨きあげたスキルを惜しげもなく披露し、毎試合ハイレベルな攻防を見せてくれた。彼らのプレーを見ていると、いろんなことに気づかされる。

 たとえば、今年のドラフトで広島は珍しく4人の社会人選手を指名した。

2位・森翔平(投手/三菱重工West)
3位・中村健人(外野手/トヨタ自動車)
5位・松本竜也(投手/Honda鈴鹿)
6位・末包昇大(外野手/大阪ガス)

 今回の都市対抗では4人とも出場し、それぞれが持ち味を発揮。あらためて指名されるだけの高い能力を持った選手だと思い知らされた。昨年1位で指名した社会人出身の栗林良吏が37セーブを挙げてセ・リーグの新人王に輝くなど、圧巻の結果を残しただけに、彼らに対する期待も大きいに違いない。

愛工大名電から広島に4位指名された田村俊介愛工大名電から広島に4位指名された田村俊介この記事に関連する写真を見る

【すでに一流プロのスイングスピード】

 しかし私のなかでは、この4人の社会人の腕利きをもってしても凌駕しきれないひとりのプレーヤーが頭から離れなかった。

 愛工大名電高から広島に4位指名された田村俊介だ。高校時代は投打の「二刀流」として活躍したが、私のなかでは絶対に「バットマン」だ。それほど田村のバッティングは傑出している。

 田村のスイングスピードは164キロで、この数字はプロでも一流なのだそうだ。

 今年の4月、ある雑誌の取材で愛工大名電のグラウンドにうかがった時のことだ。ティーバッティングを繰り返す田村のスイングを見ていたのだが、まるでバットの重みを感じない。本当に箸を振っているような感じで、それぐらいバットを自由自在に操っていた。

 バットを持たせてもらうと、本人の言う「900グラムちょっと」の重量感はたしかにあるが、いざ田村がスイングするとその重量感が消えてしまう。

 決して強く振ろうとはせず、とらえるポイントをしっかり見据えて、柔らかくヘッドを走らせてインパクトで弾き返す。一連の動作に一切の無駄がないから、重いバットも軽く見えるのだろう。

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