安達了一「僕がショートを守っていないオリックスは強い」。リーグ優勝の裏にあった覚悟と葛藤 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

 この試合は1-1のまま延長に入り、10回裏、バファローズがサヨナラ負けを喫する。安達は"2番ショート"としてフル出場、5打数2安打を記録していた。安達が当時をこう振り返る。

「今年、リーグ優勝した時は、真っ先に2014年のことが思い浮かびました。そのこともあって、本当に嬉しかったですね。勝ちきれなかった7年前と勝てた今年の違い......何が違ったんですかね。7年前のチームは先手先手で攻めて、中継ぎ陣がよくて、最後、抑えて勝つ、みたいな勝ちパターンでしたけど、今年のチームは負けていても終盤、追いついて勝ち越すことができるチームでしたね。

 あきらめない気持ちは同じでも、実際に今年は逆転するぞという強い気持ちが一人ひとりにあって、そして本当に逆転した。あきらめない気持ちだけじゃなくて、気持ちを形にできたというところが今年の強さだったのかもしれません。若手がのびのびできていることが一番の理由なんじゃないですかね。僕らは何もしてないんですよ。ナメられてるだけで(笑)」

 今シーズンの開幕前、バファローズには安達をはじめとする中堅どころにとって厳しい空気が漂っていた。

 中嶋監督は開幕戦でセカンドにプロ3年目、20歳の太田椋、ショートにはプロ2年目、19歳の紅林弘太郎を抜擢。さらに、センターに佐野皓大、サードには宗佑磨、キャッチャーに頓宮裕真と、いずれも1996年生まれ、24歳の同学年トリオをスタメンに並べた。そして安達には太田、紅林のバックアップとしての役割が求められた。安達はこう言った。

「覚悟はしていました。全試合に出られる身体じゃないので、自分でもずっと出るわけにはいかないことはわかっていましたし、その分、若手が育ってくれないとチームが強くならないと思っていました。自分がショートを守っていないチームは強い、と確信していましたからね。ただ、想像以上にセカンドとショートの景色が全然違っていたので、正直、セカンドには戸惑いました。

 今もそうなんですけど、一歩目がきれないんです。なぜなんでしょう......自分でもよくわからないんですけど、左バッターの引っ張った打球とか、右バッターの流した打球に対して一歩目がきれなくて、打球に辿り着けない感じなんです。ショートだとそれがなくて、10月にクレ(紅林)がデッドボールを受けて欠場した時(10月12日のマリーンズ戦)、久しぶりにショートを守ったんですけど、めちゃくちゃ守りやすかったんです。たぶん、まだセカンドに慣れていない、ということなのかな。もっと守れると思っていたのに反応が遅いので、めっちゃドキドキしながら守っています。セカンドの楽しさとかを感じる余裕は、まだ全然ないですね」

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