OBの館山昌平が分析。なぜヤクルトはシーズン前の下馬評を覆し、日本一を達成できたのか

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Kyodo News

 ヤクルトが3勝2敗で王手をかけた日本シリーズ第6戦が11月27日、ほっともっとフィールド神戸で行なわれた。オリックス・山本由伸、ヤクルト・高梨裕稔の両先発が投手戦を繰り広げるなか、5回表、ヤクルトが塩見泰隆のレフト前タイムリーで1点を先制。しかし、オリックスは直後の5回裏、福田周平のレフト前タイムリーで追いついた。その後は両者譲らぬ展開となり、均衡が破れたのは延長12回表。代打・川端慎吾のレフト前タイムリーでヤクルトが1点を勝ち越した。その裏は、延長10回2死から登板した守護神マクガフが無失点に抑え、ヤクルトが20年ぶり6度目の日本一に。勝敗を分けたポイントについて、ヤクルト時代の2015年に日本シリーズに出場した館山昌平氏に聞いた。

20年ぶり6度目の日本一を飾り、胴上げされるヤクルト・高津臣吾監督20年ぶり6度目の日本一を飾り、胴上げされるヤクルト・高津臣吾監督この記事に関連する写真を見る オリックスとしては本拠地で大エースの山本由伸投手が先発し、「絶対に負けられない」という戦いでした。対して3勝2敗のヤクルトは、王手をかけているものの、第6戦を落とすと第7戦は相手を連勝して勢いに乗った形で迎えることになるので、気持ち的には五分五分の状況だったと思います。

 山本投手はさすが沢村賞に輝いただけあって、何段もギアを持っているようなピッチングでした。序盤はストレートで押して、中盤以降は要所でフォーク。6回に2つのエラーで無死1、2塁になった場面でも、「大丈夫、大丈夫」とチームメイトに声をかけるなど、本当にエースらしい佇まいでした。

 あの場面を目一杯の力でいき、終盤はスライダー、カーブを多投しながら、フォークとカットボールをうまく使い、プロ入り最多となる9回141球を投げ抜きました。本当に魂がこもった、すばらしいピッチングでした。

 一方、ヤクルトの高梨投手は、初回、2回と球が上ずっていました。それでも走者を出してからはフォークの制球が安定していましたし、クイックをうまく使いながら低めに集めていました。

 インターネット中継ではイニング間の投球練習も流れていて、よかったのは初回だけでした。2回以降は「なんとかしなくては」という様子で、だからこそ丁寧に投げていました。

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