ヤクルト高橋奎二の完封劇はなぜ生まれたのか。吉見一起が説いた投手心理と勝負どころの1球

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Kyodo News

 日本シリーズ第2戦が11月21日に行なわれ、オリックス・宮城大弥、ヤクルト・高橋奎二の両左腕が立ち上がりから持ち味を発揮して7回まで0対0の投手戦に。宮城に5回まで完璧に抑えられたヤクルトは8回、2死1、2塁から青木宣親がセンター前タイムリーを放って1点を先制。9回にも1点を追加すると、先発の高橋がプロ入り初の完封勝利を飾った。勝敗を分けたポイントはどこにあったのか。中日時代の2011年に日本シリーズで敢闘賞を受賞した吉見一起氏に聞いた。

オリックス打線を完封した高橋奎二(写真左)と中村悠平のヤクルトバッテリーオリックス打線を完封した高橋奎二(写真左)と中村悠平のヤクルトバッテリーこの記事に関連する写真を見る 宮城との投手戦を制し、ヤクルトの高橋が完封勝利を飾りました。大舞台でこれだけのピッチングをするのは「すごい」という言葉で簡単に片づけられるものではなく、大したものだなと思います。

 チームが第1戦に負けたことで、高橋にはプレッシャーがあったのか、逆にエネルギーになったのかはわかりません。2回、無死1塁でラベロのショートゴロがゲッツーになった場面は、抜けていてもおかしくない当たりでした。序盤にバックの好守に助けられたことに加え、宮城に引っ張られてのピッチングだったと思います。

 相手先発のデキがよかったら、つられて自分もよくなることがピッチャーにはあるんです。宮城、高橋ともに飛ばしすぎじゃないかというくらい飛ばしていましたが、日本シリーズは後先を考えずに投げていけばいい。そのなかで、お互いがライバル心を持ったことが投手戦の要因になったと思います。

 僕のなかでの高橋のイメージは、セ・リーグの左腕のなかで圧倒的にストレートが速い一方、コントロールに不安があるピッチャーだということです。でもこの試合、3回と5回にピンチを迎えましたが、大きかったのはこの場面でミスをしなかったことです。

 そして高橋の持ち味をうまく引き出したのが、キャッチャーの中村(悠平)。序盤は真っすぐとチェンジアップがメインで、ときどき入れるカーブがなかなか決まらない。それでもカーブを捨てることなく使い続けた。

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