この先、ヤクルト宮本慎也監督の誕生はあるか。八重樫幸雄が「指導者として覚えたほうがいい」と考えること

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

「オープン球話」連載第86回 第85回を読む>>

【威厳があって近寄りがたい昔タイプのリーダー】

――前々回、前回と宮本慎也さんについて伺ってきました。今回はその後編ということでお願いします。前回のラストで「慎也の考え方は広岡達朗さんに近い」とお話されていました。その辺りからぜひお聞かせください。

八重樫 慎也のキャプテンシーは他の人にはない、すばらしい特徴だと思います。自分に厳しい分、他人にも厳しい。人に言うからには、まず自分がきちんと見本を示す。それは今の時代ではなかなかいないタイプですよ。

ヤクルトのヘッドコーチ時代、立浪和義(左)と話をする宮本慎也ヤクルトのヘッドコーチ時代、立浪和義(左)と話をする宮本慎也この記事に関連する写真を見る――実際、ヤクルトのヘッドコーチ時代は「厳しい」という報道がたくさんありました。

八重樫 「厳しい」とか「怖い」とか、そんな報道もたくさんあったけど、僕は別にそうは思わないです。確かに慎也は、あえて言えば「昔のリーダー」タイプなんですよ。今のリーダーのように、決して威張らず若手とも対等に接するフレンドリーなリーダーじゃなくて、威厳があってちょっと近寄りがたいタイプ。だからこそ、今のような時代では逆の意味で目立つんでしょうね。

――その点はご本人も自覚されていたようでした。

八重樫 慎也の場合は、前回も言ったけど、できないことは徹底的に考えて猛練習をして克服してきた経験があるんですよ。だから、自分がやってきたことに揺るぎない自信がある。信念があるんです。僕ら指導者の視点からは、何も間違っていないと思います。でも、くり返しになるけど、今の若手選手と接する時にそれでいいのか、という思いはあるかな。

――ヘッドコーチとしてはわずか2年(2018年、2019年)の在籍でした。今後、コーチとして、監督としてまたヤクルトに戻ってきてほしいと個人的には強く思っています。

八重樫 キャプテンシーは超一流のものを持っているのは間違いない。ただ、指導者となった時に、若者たちに対する接し方はいろいろと考えなければいけないとは思います。僕としては、いつまでも「慎也は慎也らしくいてほしい」という気もするけど、実際に今までと同じでは、指導者としていい結果を残すのは難しいと思います。今後の慎也にとって大切なのは「どこを変えずに、どこを変えるか?」ということだと思いますね。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る