話題のフレーミングが上手なキャッチャーは誰か。谷繁元信にその技術を聞いた (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 一方、谷繁氏によると、日本では「(ひじから先を)円を描くように使いなさい」と指導されることが多いという。同氏は「それは必要なこと」としたうえで、独自の捕球法を説明した。

「ひじから動かすと、どうしても先が球威に負けます。だから、なるべく大きいところ(肩)に意識を置きながら動かすように使っていました」

 谷繁氏は地道に捕球技術を磨く一方、球審と"信頼関係"を築くことも大事だと言う。

 たとえば、ミットを故意に動かすと、相手を"だます"行為に映りかねない。試合は自チーム、対戦相手、審判がいて初めて成り立つというスポーツマンシップの観点も、谷繁氏は意識していたという。

「ある程度、年齢を重ねてからは、球審といい関係を作るために必要と考えて、ミットを動かさないようにしていました。球審とケンカしても、得にならないので。ここという勝負どころで、ミスジャッジされたくないという気持ちもありました」

 たとえば試合序盤にボール1個分外れた球を球審が「ストライク」と判定した際、谷繁氏はラッキーと感じる反面、"ミス"を指摘していたという。終盤の勝負どころで突如同じコースを「ボール」とされた場合、試合の行方に影響を及ぼしかねないからだ。

「今のはちょっと行き過ぎですよ」

 捕手が後ろを振り返って話しかけるわけにはいかず、谷繁氏は前を向いたまま球審に身体を少し寄せて、そう指摘した。直後、背中をトントンと叩かれ、「わかったよ」という合図をもらったこともあったという。

 これぞ、プロフェッショナルの世界だ。スポーツマンシップに則り、大事な場面で勝利の女神に突然そっぽを向かれないようにも備えている。

 捕手としての技術と美学を大切にしたうえで、谷繁氏はフレーミングをこう定義する。

「フレーミングは、ストライクをボールと言われないためのキャッチングだと僕は思います。ボールをストライクと言ってもらうキャッチングではない」

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