高橋慶彦が選ぶスイッチヒッターベスト5。「オレは実験台だった」 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

1位 松永浩美(実働期間:1981〜97年/元オリックスほか)

 松永がナンバーワンやろうなぁ。サードの守備はうまかったし、右でも左でも長打が打てて、打率も残せる。盗塁ができるだけの足まである。すべてにおいて偏りがなく、バランス的にナンバーワンだろうな。

 監督からしたら、使い勝手のよさは群を抜いていただろうね。相手が右投手だろうと左投手だろうと関係なく、代走や守備固めも必要ないのだから。日本シリーズやオールスターで顔を合わせる機会があったけど、松永が出てくると怖かったもの。

 今回は企画の性質上、5人に絞らせてもらったけど、つらい作業だったなぁ(笑)。だって本当なら、松永と稼頭央以外はほぼ横一線という感覚だったから。正田耕三、西村徳文(元ロッテ)、松本匡史さん(元巨人)、金城龍彦(元横浜ほか)、教え子だった西岡剛(栃木ゴールデンブレーブス)......。すばらしい選手ばかりですよね。

 正田なんて日本人スイッチヒッターで初めて首位打者を獲っていて、しかも2年連続なんだから。もっとも、若い時はオレが正田に飛び蹴りしたこともあったけど(笑)。まあ、若いころはお互いに尖っていたから。今は普通の関係だし、この間も電話で話しましたよ。

 今のプロ野球界は、スイッチヒッターがすっかり少なくなってしまいました。原因ははっきりしている。足の速い選手は子どものころから左打ちに変えてしまっているからでしょう。

 野球は左打者が有利になるようにできています。左打席のほうが一塁ベースまでの距離が近いし、右投手のほうが圧倒的に多いのだから。それに、本当にいい左打者は「左対左」なんて苦にしないものです。大谷翔平(エンゼルス)しかり、柳田悠岐(ソフトバンク)しかり。

 とはいえ、日本人のなかにもホームラン王を獲るようなスケールの大きなスイッチヒッターが現れてほしいですね。スイッチヒッターのひとりとして、楽しみにしています!

【Profile】
高橋慶彦(たかはし・よしひこ)
1957年、北海道生まれ。74年ドラフト3位で広島東洋カープに入団し、78年からレギュラーとして定着。赤ヘル黄金時代の「1番ショート」として活躍し、89年までカープでプレー。90年にロッテ、91年に阪神に移籍し、92年に現役を引退。ダイエー、ロッテでコーチを務め、多くの選手を育て上げた。現在は指導者、解説者として活躍しながら、YouTubeでの活動も展開中。

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