由規は10年前に命を奪われた「元女房役」、その家族のためにも投げ続ける (3ページ目)

  • 白鳥純一●取材・文 text by Shiratori Junichi

――震災では、仙台育英高校でバッテリーを組んでいた先輩の斎藤泉さん(享年22歳)も命を落とされました。ウイニングボールを霊前に供えたとのことですが、10年経った今も、斎藤さん家族との交流は続いているのですか?

「(斎藤さんの)お父さんをはじめ、今でもご家族のみなさんと会っています。特にお父さんは、すごく僕のことを気にかけてくれて、僕がまだ野球を続けることを喜んでくれています。それを知って、『野球をしている姿を見せたい』という思いが強くなりました」

――由規さんはこの10年間、どのような思いでプレーしてきましたか?

「個人的にも、キャリアに関わる大きなケガをしてからも10年。これまで『地元のために』という気持ちでプレーはしていましたが、その反面、『実際は何ができたのか?』というもどかしさを感じることも多かった。どれだけの人に見てもらえるかはわかりませんが、『何とか東北にいいニュース届けたい。野球を続けてさえいれば、それができるはず』という思いを大切にしながら、今年もプレーします」

■由規(よしのり)
1989年12月5日生まれ。宮城県仙台市出身。投手。仙台育英高から、5球団競合の末に2007年高校生ドラフト1巡目でヤクルト入り。2010年に12勝、日本人最速(当時)の161kmを記録するも度重なるケガに苦しむ。2018年にはヤクルト、2020年には楽天を自由契約になり、今年1月にBCリーグの埼玉武蔵に入団した。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る