2021.02.19

DeNAの開幕投手候補は崖っぷち上等。
大貫晋一の山あり谷ありの野球人生

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

 脱、豆苗──。

 ベイスターズの公式Twitterに新年の挨拶をアップした大貫晋一は、今年の目標に"マッチョ!!"計画を掲げた。昨年、細身の体型ゆえにチームメイトから『豆苗』のニックネームがついた大貫だったが、『脱、豆苗、マッチョ化へ』の流れもあったからか、キャンプ3日目となる2月3日(この日は自身の27歳の誕生日)、大貫はじつに"パンチ"の効いたバースデイ・ギャグを披露していたのだ。練習前の挨拶に立って、こう言った。

「人生、楽しいこと、辛いこともあるんですけど、やっぱり人生って......山あり、谷あり、モハメド・アリ!」

昨シーズン、チーム最多の10勝をマークしたDeNA大貫晋一 そう叫んで繰り出した『豆苗クン』のシャドウボクシングは、チームメイトを爆笑の渦に巻き込んだ。1994年生まれの大貫がおよそ半世紀前、世界に君臨した伝説のヘビー級チャンピオンの"蝶のように舞い、蜂のように刺す"ボクシングスタイルを知るはずもないと思って「アリを知っていたの?」とぶつけてみたら、大貫はこう言って笑った。

「正直、そうですね......モハメド・アリ、あんまりわかってないです(笑)」

 プロ3年目を迎える大貫は、ルーキーイヤーの一昨年が6勝、昨年はチームトップとなる2ケタの10勝を挙げている。順風満帆にしか見えない大貫の野球人生の、いったいどこに谷があって、どこに山があったと言うのだろう。

「大学時代にヒジをケガした時が谷だったかもしれませんね。山は......山か、山は来てないかな。でも、プロ野球に入れたことは山だったんじゃないですかね。あれっ、でも、そうすると時系列がおかしくなっちゃいますね。そうなら『人生、谷あり、山あり、モハメド・アリ』か(笑)」

 横浜で生まれ、小学校3年生の時に野球を始めた。今は亡き大貫の父は、中国に渡って野球の振興に務めていたこともある。そんな父の影響もあって野球を始めた大貫だったが、彼の野球人生、何度も何度も谷に突き落とされてきた。

 横浜青葉シニアに所属していた中学時代はメンバー外で、ほとんど試合に出ていない。高校時代は、夏に甲子園へ一度出場したことがある桐陽へ進み、3年夏はエースとして静岡大会のベスト8まで勝ち進んだ。