「この選手が本当に育成の選手か」打撃投手・久本祐一が語る中日の野手陣 (3ページ目)

  • 寺崎江月●取材・文 text by Terasaki Egetsu
  • photo by Sankei Visual

──センターラインの話に戻りますが、昨年は捕手の木下拓哉選手も飛躍しましたね。

「木下は入団当初からバッティングがよくて、前打撃コーチの土井正博さんがすごく高く評価していました。今の活躍を一番喜んでいるのは土井さんかもしれませんね。彼には長打力もあり、4番を任せてもいいくらいの打者だと思っています。さらに、沢村賞を獲得した大野(雄大)をリードし、キャッチングなど守備もいい。中日では谷繫(元信)さん以来の正捕手候補ですね」

──昨年7月に育成契約から支配下登録され、4番・捕手でも起用されたアリエル・マルティネス選手はいかがですか?

「1軍に初昇格した時の東京ドームの試合前に、初めて打撃練習で投げたんですが、びっくりしましたよ。一番の特長は反対方向(ライト)にも遠くに飛ばせること。内角は苦手そうでしたが、ファールにする技術もある。『この選手が本当に育成の選手だったのか』と信じられませんでした。打撃練習後、すぐに与田(剛)監督に印象を聞かれたんですが、『すごいと思います』と素直に答えましたよ」

──若い選手では、2019年のドラ1高卒ルーキー、石川昂弥選手の開花を待つファンが多いと思いますが、どんな選手でしたか?

「プロ向きな選手だと感じました。1軍で起用されたのは高橋がケガで離脱していた際のわずかな期間でしたが、高橋が復帰して控えに回ることが多くなった時に、僕に『生きている球が打ちたい。実戦と同じような配球で投げてください』と求めてきたんです。

 試合に出られないと実践感覚は鈍っていきます。高卒1年目でそれに危機感を持てるのがすばらしいですね。1軍に上がったばかりの選手は、首脳陣に少しでもアピールしようと、打ちやすい球を要求してしまうもの。そうではなくて、自分の成長のために練習するという意志の強さがありました」

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