大久保博元が語る西武で巨漢打者が育つワケ。ドラ1渡部に「減量は必要ない」 (4ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Sankei Visual

 でも問題を1個ずつ指摘していくと、選手はわけがわからなくなる。どこか1つ言ってあげれば、直るんじゃないか。こいつはポイントを前で打たせたら、全部解決するなと思いました。体重を前足に乗せなければ、前では打てないですから」

 中村は2008年に初の本塁打王に輝き、球界屈指の長距離砲になったばかりか、守備を向上させ、チーム屈指の走塁技術も見せていく。そうして巨漢打者に対する偏見は薄まり、スラッガー候補として獲得する球団が増えていった。

 西武で言えば、2013年ドラフト2位の山川だ。二軍では1年目から本塁打王に輝いた一方、一軍に上がると精彩を欠いた。2013年から楽天の二軍監督を務めた大久保氏にはその姿が歯痒く見え、西武の後輩によく声をかけた。

「おまえは上に来るとバタバタ結果を欲しがっている。もったいないよ。ダメならファームに行けばいいだろ? ずっとファームだったんだから。なんで上に行くと、気持ちがそんなにぶるっちゃうの? ファームではうまくやっているじゃないか」

 山川は2017年後半に一軍で猛打を炸裂させると、 翌年から2年続けて本塁打王に輝いた。今や球界を代表するスラッガーだ。

 たとえ"巨漢"でも動ければまるで問題ないと球界に浸透し、他球団でもロッテの井上晴哉、楽天の岩見雅紀、元中日の中田亮二(現・JR東海)らがプロ入り。そして今年、西武が渡部を獲得した。

 ドラフト時の体重は112キロ。それから教習所通いで練習できず、117キロまで増えた。渡部はキレを出すために減量を考えていると報じられたが、大久保氏は減量の必要はないと断言する。

「おかわりにも言ったけど、5〜10メートルのダッシュを10本くらい全力でやればキレは出る。とにかく食って練習しろと。今のおまえがいいからドラ1で指名しているのに、勝手に変えたらかえって契約違反だって(笑)。渡部にしろ、我々は何もせずに太ったんじゃなく、鍛えて太ったんだから......今のままでいいんですよ」

 渡部に打撃面で改善点の余地はあるが、"ドラ1"級の素材だと大久保氏は太鼓判を押す。

「動画を見る限りではインコースが弱く見えるけど、飛ばす体力もある。俺よりはるかに動けます。スイングと動きを見たら、それはドラ1だなと」

 中村、山川という規格外のホームランアーティストが育った西武で、ふたりより重量の渡部はどこまで成長するのか。2021年、楽しみな打者がプロ野球人生をスタートさせる。

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